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相続コラム

第161回相続コラム 相続登記申請用の遺産分割協議書の書き方【見本付】

2024年4月1日から相続登記が義務化され、不動産を相続等によって取得した場合には、相続登記を法務局に申請しなければなりません。遺産分割協議によって不動産を相続した場合にも、相続登記を申請することは義務であり、その場合には、遺産分割協議書の提出が必要となります。今回のコラムでは、相続登記申請用の遺産分割協議書の書き方について解説したいと思います。

 

相続登記と遺産分割協議書

相続登記申請用の遺産分割協議書の書き方について解説する前に、理解を深めるために、相続登記と遺産分割協議書についての法律知識を簡単に解説します。

相続が発生すると、故人が所有していた不動産は、遺言書がなければ、自動的に相続人に相続されます。

相続人が複数人いる場合には、法律で定められた割合(法定相続分)に従って遺産を相続人間で共有することになるため、遺産を構成する不動産も共同相続人間で共有状態となるのが原則です。

不動産を相続人の共有財産として、そのまま相続登記を申請することもできますが、特定の相続人に不動産を相続させたいというケースでは、特定の相続人が不動産を相続する旨の遺産分割協議を行う必要があり、その遺産分割協議の内容を示した遺産分割協議書を提出して、相続登記を申請する必要があります。

つまり、遺言書がなく、法定相続分以外の割合で相続登記を申請する場合には、遺産分割協議書の提出が必要というわけです。

例えば、Xさんが亡くなり、その相続人として長男・長女の2人がいたとします。Xさんが所有していた不動産を、長男名義に変更したいからといって、いきなり長男の単独所有として相続登記を申請することはできません。

なぜなら、遺産分割協議が成立していない段階では、故人が所有していた不動産は、長男・長女の2人で、それぞれ法定相続分の割合に従った1/2の割合で共有状態になっているので、それを単独所有として登記を申請することは、実体に合わない虚偽の申請となるからです。

長男名義で相続登記を申請するには、不動産を長男が相続する旨の遺産分割協議を行い、その協議の内容を示した遺産分割協議書を提出して、相続登記を申請する必要があるのです。

なお、遺産分割協議が有効に成立すれば、その協議に基いて不動産の権利関係は変動しますが、実際に協議が有効に成立したかどうかは、登記の申請を受け付ける登記管にはわかりませんので、協議が成立した証明として、遺産分割協議書を提出するわけです。

 

相続登記申請用の遺産分割協議書【見本】

相続登記申請用の遺産分割協議書の見本は以下のようになります。

なお、上記の見本は、札幌太郎さんが亡くなり、その相続人として妻の札幌花子さん、長男の札幌一郎さん、次男の札幌次郎さんがおり、遺産分割協議によって札幌一郎さんが不動産を相続するというケースを念頭においております。

以下、上記見本をもとに、詳しく書き方を解説していきます。

 

①について

作成した書面が遺産分割協議書であることを明確にするために『遺産分割協議書』と記載します。

 

②について

誰の遺産について分割する協議なのか明確にするために、被相続人(故人)の氏名、亡くなった日付、生年月日、本籍、住所等、被相続人を特定するための情報を記載します。なお、亡くなった日付は、正確に戸籍謄本等に記載された日付を記載します。

 

③について

遺産分割協議は、法律上、共同相続人全員で協議を行い、その全員の合意によって成立するため、それらが存在した旨を記載します。

 

④について

遺産分割協議の内容を記載します。今回の見本では、故人が所有していた不動産を札幌一郎さんが相続するという内容のため、その内容を記載しています。なお、『不動産』を具体的に特定するための情報を一緒に記載すると長くなり、読みづらくなるため、今回の見本では、“下記の不動産”と表記し、不動産の具体的な情報は、⑧で記載しています。

 

⑤について

遺産分割協議書を相続人全員分作成しなければならないという決まりはありませんが、後の争いを防ぐために、人数分作成し、各自保管するというのが一般的です。

 

⑥について

遺産分割協議が成立した日付を記載します。遺産分割協議は相続人全員の同意があれば、やり直すことが可能ですので、成立した日付は重要です。

 

⑦について

相続人全員の住所、氏名を記載し、押印します。パソコンで遺産分割協議書を作成する場合でも、氏名は署名するようにしましょう。氏名を署名しなればならないという法律上の決まりはありませんが、後の争いを防ぐべく、文書の真正性を確保し、証明力を上げるという観点からは署名することをおすすめします。押印は実印で行います。登記申請の際には、印鑑証明書の提出が要求されるためです。

 

⑧について

遺産分割協議の対象となった不動産を特定するために、不動産の情報の詳細を記載します。土地を相続する場合には、所在、地番、地目、地積を、建物を相続する場合には、所在、家屋番号、種類、構造、床面積を記入します。内容を正確に記入するために、登記事項証明書を取得し、その証明書の記載通りに記載し、登記申請書と対応するようにします。

 

おわりに

今回のコラムでは、相続登記申請用の遺産分割協議書の書き方について解説しましたが、いかがだったでしょうか。相続した不動産を共有状態のままにしておくと、共有者間での意見の食い違いから、その活用が阻害されたり、後のトラブルの火種となるおそれもありますので、しっかりと遺産分割協議を行い、その上で相続登記を申請することをオススメします。遺産分割協議では、原則、すべての遺産が分割の対象となりますが、相続登記を申請するためだけであれば、今回のコラムで示した見本のように、不動産のみについて協議の内容を記した遺産分割協議書も問題なく有効となります。

遺産分割協議が有効に成立するためには、相続人全員の合意が必要ですが、相続人間で意見が対立して協議がまとまらない、どのように分割すればいいのかわからないという場合には、専門の弁護士に相談することをオススメします。

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