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相続コラム

第101回相続コラム 遺産共有と通常共有が併存する場合の特則の施行

令和5年4月1日より相続に関する改正法が施行され、新設された遺産共有と通常共有が併存する場合の特則が施行されました。今回のコラムでは、そもそも遺産共有・通常共有とは何か、新設された特則で何が変わったのかについて解説したいと思います。

 

遺産共有・通常共有とは

単一の物が複数人によって支配・利用されている状態を共有といいます。簡単に言うと、1つの物を複数人で所有している状態です。

この共有については、法律上、相続によって生じた共有状態=『遺産共有』と、それ以外の事情によって生じた通常の共有状態=『通常共有(物権共有ともいいます)』の2つに分けることができます。

遺産共有と通常共有との違いについては、難しい議論もありますが、大きな違いとして、分割する手続きが全く異なるという点があります。

遺産共有について、その共有状態を解消するには、遺産を分割する手続きを行うことになるため、遺産分割協議において合意が成立するか、家庭裁判所による審判が必要となります。また、遺産共有の解消とは、すなわち遺産の分割にあたるため、遺産分割時の基準を示した民法第906条の適用がある点も、通常の共有物分割請求とは異なります。

それに対して、通常共有の場合には、共有状態を解消するためには、共有物分割請求を通常の裁判所に請求することになります。通常共有は、相続によって生じた共有状態ではないため、当然、民法第906条の適用はありません。

民法第906条
遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする。

 

遺産共有と通常共有の併存

遺産共有と通常共有の大きな違いとして、その分割手続きが異なるのは、前述したとおりなのですが、そうすると、両者が併存している場合には、どのような分割手続きが必要となるのでしょうか。

例えば、ある土地をAさんとBさんが共有(通常共有)していたとします。その後、Bさんが亡くなり、相続が発生し、Bさんの共有持分をCさんとDさんが相続したとします。この場合、A・C・Dさんが土地を共有していることになりますが、AさんとC及びDさんは通常共有、CさんとDさんは遺産共有という、性質の異なる共有関係が併存することになります。

この場合、改正法施行前では、共有状態を解消するためには、2つの異なる共有状態が存在する以上、2つの別個の手続きを進める必要がありました。すなわち、AさんとC及びDさんの通常共有を解消するための共有物分割請求と、CさんとDさんの遺産共有を解消する遺産分割を別個に進める必要があり、手続き的に非常に手間がかかってしまいます。

 

新設された遺産共有と通常共有が併存する場合の特則

遺産共有と通常共有が併存する場合の分割手続きは、複数の手続きを別個に進める必要があり、非常に迂遠かつ、手間のかかるものでした。

令和5年4月1日に施行された改正法では、相続開始時から10年を経過したときは、相続人から異議等がなければ、遺産共有関係の解消が、地方裁判所等の共有物分割訴訟において実施することが可能とされました(新民法258の2第2項、第3項)。

つまり、遺産共有と通常共有が併存する場合であっても、相続開始から10年経過した後には、遺産分割協議や調停・審判の手続を経ずに、共有物分割訴訟の手続によって、共有関係を一挙に解消することができるようになったのです。

遺産分割調停や審判においては、遺産全てが審理の対象になるため、相続財産全体を把握する必要があり、また、仮に寄与分や特別受益についての主張が出てきた場合には、審理すべき事柄が多岐に渡るため、審理が複雑化・長期化するケースも少なくありません。しかし、純粋な共有物の分割裁判であれば、対象となっている共有物のみについて判断すれば良く、また寄与分や特別受益なども考慮する必要がないため、迅速な裁判が期待できることとなります。

ただし、通常の共有物分割請求となった場合には、相続人の利益調整のための民法第906条等の適用はなくなるため、「それでは困る」という相続人に異議を申し立てる権利も付与されています。この異議申し立ては、共有物分割訴訟の通知を受けた日から2ヶ月以内にしなければなりません。

新設された民法第258条の2
共有物の全部又はその持分が相続財産に属する場合において、共同相続人間で当該共有物の全部又はその持分について遺産の分割をすべきときは、当該共有物又はその持分について前条の規定による分割をすることができない。
2 共有物の持分が相続財産に属する場合において、相続開始の時から十年を経過したときは、前項の規定にかかわらず、相続財産に属する共有物の持分について前条の規定による分割をすることができる。ただし、当該共有物の持分について遺産の分割の請求があった場合において、相続人が当該共有物の持分について同条の規定による分割をすることに異議の申出をしたときは、この限りでない。
3 相続人が前項ただし書の申出をする場合には、当該申出は、当該相続人が前条第一項の規定による請求を受けた裁判所から当該請求があった旨の通知を受けた日から二箇月以内に当該裁判所にしなければなりません。

 

おわりに

今回のコラムでは、改正法により新設された遺産共有と通常共有が併存する場合の特則について解説しましたが、いかがだったでしょうか。分割の手続きが絡むため、少し難しいお話しだったかもしれませんが、今回解説した新設された条項も前回解説した新しい遺産分割のルールも、相続開始後、長期間経過した後は、遺産の分割に関する手続きを簡素化し、スムーズな分割を実現し、もって、所有者不明土地問題等を解消したいという趣旨が根底にあります。相続に関する法律は、近年、目まぐるしく変化しているため、相続に関することで疑問や不安のある方は、専門の弁護士に相談することをおすすめします。

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