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相続コラム

第205回相続コラム 暗号資産(仮想通貨)の相続|把握・評価・移転の方法

「亡くなった家族がビットコインやイーサリアムを持っていたと聞いたけれど、どうすればいいのかわからない」——そんな不安を抱えている方が、近年急速に増えています。暗号資産(仮想通貨)はインターネット上に存在するデジタル資産であり、銀行口座や不動産のように通帳や登記簿があるわけではありません。どこに保管されているのか、いくらあるのか、そもそも本当に存在するのかすら、相続人にはなかなか見えにくいのが実情ではないでしょうか。

暗号資産は法律上「相続財産」に含まれます。しかし、その把握・評価・移転の方法は、預貯金や不動産とは大きく異なります。適切に対応しなければ、大切な財産を失ってしまったり、相続税の申告で誤りが生じたりするリスクもあります。一方で、手続きの方法を知らずに放置しているうちに価値が大きく変動してしまうことも、暗号資産ならではの悩みです。

今回のコラムでは、暗号資産(仮想通貨)が相続財産に含まれる場合の「把握・評価・移転」それぞれの方法と注意点について、法律的な観点を交えながら解説します。相続手続きに直面している方の少しでもお役に立てれば幸いです。

暗号資産は相続財産になる|まずは基本を押さえよう

暗号資産とは何か、なぜ相続できるのか

暗号資産とは、ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)などに代表される、インターネット上でやり取りされるデジタルの財産です。2017年施行の改正資金決済法により、日本では「暗号資産」として法的に定義されています。

民法上、相続財産とは「被相続人(亡くなった方)が持っていた一切の財産上の権利義務」です。暗号資産も財産的価値を持つ権利として、相続財産に含まれると考えられています。預貯金と同様に、被相続人が死亡した時点で相続人に承継されるのが原則です。ただし、その実態は通常の金融資産と大きく異なるため、相続手続きに特有の難しさが伴います。

把握が難しい理由とその対策

暗号資産の最大の特徴は、「どこにあるのかが外から見えにくい」点です。通常の銀行口座であれば、金融機関に照会することで残高を確認できます。しかし、暗号資産の場合は以下のような保管形態があり、確認方法もそれぞれ異なります。

  • 取引所(交換業者)のウォレット:コインチェック、bitFlyer、GMOコインなどの国内取引所に口座を開設して管理している場合。取引所に問い合わせることで残高照会が可能な場合があります。
  • ハードウェアウォレット・ソフトウェアウォレット(自己管理型):被相続人が自分のパソコンやUSBデバイスで直接管理している場合。「秘密鍵」と呼ばれるパスワードがなければ、誰もアクセスできません。

まずは被相続人のパソコン・スマートフォン・メール受信履歴・紙のメモ・USBデバイスなどを丁寧に確認することが第一歩です。取引所からのメール、2段階認証のSMS、取引明細書などが手がかりになることがあります。秘密鍵やシードフレーズ(回復フレーズ)が見つからない場合、自己管理型ウォレットの暗号資産は永久に取り出せなくなってしまう可能性があります。早期の確認と専門家への相談をお勧めします。

相続税申告のための評価方法

暗号資産の評価はいつの時点で行うか

相続税の申告においては、すべての相続財産を「相続開始日(被相続人が亡くなった日)時点の時価」で評価することが原則です。暗号資産も例外ではなく、相続開始日における時価で評価します。

国税庁の取り扱いによれば、暗号資産の評価額は、活発な市場が存在する場合には「相続開始日において取引された価格(取引所の公表する最終価格など)」を基準とします。具体的には、被相続人が利用していた取引所の相続開始日における終値や、複数の取引所の平均値を参照する方法が考えられます。

注意が必要なのは、暗号資産は価格の変動が非常に激しいという点です。相続開始日から申告期限(原則として相続開始を知った日の翌日から10か月以内)までの間に価格が大幅に下落することもあります。評価額と実際の換金額が大きく乖離するケースも珍しくないため、税務上の取り扱いについては早めに税理士や弁護士に相談されることをお勧めします。

複数の種類・複数の取引所にまたがる場合の注意点

被相続人が複数の銘柄(ビットコイン・イーサリアム・リップルなど)を保有していたり、複数の取引所に口座を持っていたりする場合、それぞれを漏れなく把握して申告する必要があります。申告漏れがあると、後から税務調査で指摘されるリスクがあります。

また、日本国内の取引所だけでなく、海外の取引所を利用していた場合は手続きがさらに複雑になる可能性があります。海外取引所は相続人による承継手続きに対応していないケースもあり、早期の確認が重要です。

暗号資産の移転(名義変更・払い出し)手続き

取引所(交換業者)に預けている場合の手続き

国内の主要取引所の場合、相続人であることを証明する書類を提出することで、被相続人の口座にある暗号資産を相続人名義の口座へ移転したり、換金して出金したりすることが可能な場合があります。一般的に必要となる書類の例は以下のとおりです。

  • 被相続人の死亡診断書または除籍謄本
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 遺産分割協議書(相続人が複数いる場合)
  • 相続人の本人確認書類

ただし、取引所によって手続きの方法や必要書類が異なります。相続人が取引所に口座を持っていない場合は新規開設が必要になることもあります。各取引所のサポート窓口に問い合わせ、具体的な手順を確認することが大切です。また、手続き中に価格が変動するリスクがある点も念頭に置いてください。

自己管理型ウォレット(秘密鍵管理)の場合の対応

被相続人が自分のパソコンやハードウェアウォレットで暗号資産を管理していた場合、秘密鍵やシードフレーズを入手できるかどうかが鍵になります。これらを取得できれば、相続人はウォレットにアクセスして暗号資産を自分のウォレットや取引所へ移転することが技術的に可能です。

しかし、秘密鍵が見つからない場合は非常に困難な状況になります。現状では、秘密鍵なしに暗号資産にアクセスする手段は事実上存在しないとされており、その場合は「相続財産として存在するが取り出せない」という状態になってしまいます。このような場合でも、相続税の申告対象になる可能性がある点には注意が必要です。

また、遺産分割協議においては、暗号資産を誰が取得するかを明確に協議書に記載する必要があります。「ビットコイン〇〇BTC」のように銘柄・数量を特定して記載することが望ましいとされています。

相続人が注意すべきリスクと対応のポイント

価格変動・セキュリティ・税務の三重リスク

暗号資産の相続には、通常の相続財産にはない特有のリスクが伴います。主なものとして次の三点が挙げられます。

  • 価格変動リスク:相続開始から手続き完了までの間に、価格が大きく変動する可能性があります。早期に把握・換金を検討することも選択肢の一つです。
  • セキュリティリスク:秘密鍵やパスワードの管理を誤ると、第三者に暗号資産を奪われたり、永久にアクセスできなくなったりする可能性があります。
  • 税務リスク:相続税の申告漏れ・評価誤りのほか、相続後に暗号資産を売却した場合には所得税(譲渡所得または雑所得)の申告が必要になる場合があります。

早期対応と専門家への相談が重要

暗号資産の相続は、放置すればするほどリスクが高まります。価格変動・秘密鍵の紛失・取引所のサービス終了など、時間の経過とともに問題が複雑化することがあります。また、相続放棄の検討が必要な場合は相続開始を知った日から3か月以内という期限があるため、早期に財産全体の状況を把握することが大切です。

北海道・札幌においても、暗号資産を保有していた方の相続事案は年々増加しています。「デジタル遺産」に詳しい弁護士・税理士と連携して対応することで、手続き漏れやトラブルを防ぐことができます。一人で抱え込まずに、専門家にご相談ください。

おわりに

暗号資産(仮想通貨)の相続は、把握・評価・移転のすべての段階において、通常の相続財産とは異なる対応が求められます。秘密鍵の問題、価格変動、税務処理など、複雑な要素が絡み合うため、早期に専門家のサポートを受けることが何より重要です。「どこから手をつければいいかわからない」という状況でも、現状の整理からお手伝いすることができますので、どうかご安心ください。

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