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相続コラム

第210回相続コラム 非上場株式(自社株)の相続|評価方法と納税資金対策

お父様やお母様が経営してきた会社の株式を相続することになったものの、「非上場株式には市場価格がないと聞くけれど、いったいいくらと評価されるのだろう」「相続税が高額になり、払えなくなるのではないか」と、不安を感じている方は多いのではないでしょうか。

さらに、株式が複数の相続人に分かれてしまうと、会社の意思決定に支障が出るおそれもあります。札幌をはじめ北海道にも、地域に根差して長く続く中小企業が数多くありますが、自社株の相続は「家族の問題」であると同時に「会社と従業員の問題」でもあるため、悩みが深くなりやすいといえます。

今回のコラムでは、非上場株式(自社株)がどのように評価されるのか、納税資金や株式の分散にどう備えるか、そして税理士と弁護士のどちらにいつ相談すべきかについて解説します。

非上場株式の評価方法と相続税の考え方

市場価格がない株式は「評価ルール」で価値を算定します

上場株式は日々の取引で価格が決まりますが、非上場株式にはそれがありません。そのため相続税の申告では、国税庁の財産評価基本通達に沿って評価するのが一般的です。

評価方法は、株式を取得する人が「経営支配株主等」かどうかで、大きく次のように分かれます。

  • 原則的評価方式:会社を支配する立場で取得する場合に用いられます。会社の規模(大・中・小)に応じて、類似業種比準方式、純資産価額方式、またはその併用で評価します。
  • 特例的評価方式(配当還元方式):少数株主が取得する場合などに用いられ、配当金額を基に比較的低く評価されます。

類似業種比準方式は、同業の上場企業の株価に、配当・利益・純資産の比率を反映して計算する方法です。純資産価額方式は、会社の資産から負債を差し引いた価値を基準にします。なお、土地や内部留保を多く抱える会社は、評価額が想定以上に高くなる可能性があります。

評価額が高くなりやすいケースと注意点

業績が好調な会社や、含み益のある不動産を所有している会社では、評価額が大きく膨らむことがあります。「帳簿を見ても現金は多くないのに、株価だけが高い」という状況も珍しくありません。

評価の計算は専門性が高く、会社の状況によって結果が大きく変わる可能性があります。まずは直近の決算書や株主名簿、定款などを確認し、早めに専門家へ見てもらうことをおすすめします。

納税資金が足りないときの対策

事業承継税制・延納・物納という選択肢

自社株の評価額が高くても、会社の株式を売ってお金に換えることは簡単ではありません。納税資金の確保には、次のような制度の活用が考えられます。

  • 事業承継税制(特例措置):一定の要件を満たす場合に、後継者が取得した自社株に係る相続税の納税が猶予され、条件によっては免除される可能性がある制度です。ただし、事前の計画提出や雇用維持などの要件があり、適用期限や要件は改正されることもあるため、最新情報の確認が欠かせません。
  • 延納:相続税を分割で支払う方法です。利子税がかかり、担保の提供が必要になる場合があります。
  • 物納:金銭での納付が困難な場合に、不動産などで納める方法です。非上場株式も一定の条件下で対象になり得ますが、ほかに適当な財産がないことなど、ハードルは高いとされています。

自社株を会社に買い取ってもらう方法

相続した株式を発行会社に買い取ってもらい、資金を得る方法もあります。相続人が会社に株式を譲渡した場合、一定の要件のもとで、みなし配当課税の特例が適用され、譲渡所得として扱われる可能性があります。また、相続税の申告期限から3年以内の譲渡については、取得費加算の特例が使えることもあります。

ただし、会社法上の財源規制(分配可能額の範囲内であること)や株主総会決議などの手続きが必要です。会社の資金繰りを圧迫するおそれもあるため、慎重な検討が求められます。

株式の分散を防ぎ、会社経営を守るために

株式が分散するとどのようなリスクがあるのか

自社株も遺産である以上、遺言がなければ、原則として相続人全員の話し合い(遺産分割協議)で承継者を決めます。協議がまとまるまでの間、株式は相続人全員で共有された状態となり、議決権の行使には原則として共有者間の合意が必要です。そのため、株主総会での決議が滞ったり、後継者が会社の方針を決められなくなったりする可能性があります。

また、後継者以外の相続人が「法定相続分どおりに株式がほしい」と主張すれば、親族間の争いに発展するおそれもあります。

遺言・生前対策・会社法の仕組みの活用

対策としては、次のような方法が考えられます。

  • 遺言書の作成:後継者に株式を承継させる意思を明確にします。ただし、他の相続人の遺留分への配慮が重要です。
  • 生前贈与や遺留分に関する民法特例:一定の要件のもとで、遺留分算定の対象から株式を除外できる制度があります。
  • 種類株式の活用:議決権制限株式などを使い、経営権と財産的価値を分けて承継する方法です。
  • 相続人等に対する売渡請求制度:定款に定めておくことで、相続により取得した株式を会社が売渡請求できる仕組みです。

これらは会社の実情や家族関係によって向き不向きがあり、一律にお勧めできるものではありません。

税理士と弁護士、いつ誰に相談すべきか

それぞれの役割と相談のタイミング

税理士は、株価評価や相続税の申告、納税資金の試算など「税金」の面を得意とします。一方、弁護士は、遺産分割協議や遺留分、株主間の紛争、遺言作成、会社法に関わる手続きなど「権利関係と争いの予防・解決」を担います。自社株の相続では、両者の連携が必要になる場面が多いといえます。

相談の時期として意識したいのは、次の点です。

  • 相続税の申告・納付期限は、相続開始を知った日の翌日から10か月以内です。事業承継税制の利用を考える場合は、さらに事前の準備が必要になることもあります。
  • 相続人間で意見が分かれそうな場合は、協議が始まる前の段階で弁護士に相談することで、対立を避けられる可能性があります。
  • ご存命のうちに準備ができるなら、生前対策の段階での相談が理想的です。

「税金のことは税理士、争いが心配なら弁護士」と切り分けつつも、どちらに相談すべきか迷う場合は、まず弁護士に状況を整理してもらうこともできます。

おわりに

非上場株式の相続は、評価額の算定、納税資金の確保、株式の分散防止と、短期間で多くの課題に向き合う必要があります。しかし、制度を知り、早めに準備を進めることで、負担やトラブルを抑えられる可能性は十分にあります。不安を抱えたまま時間が過ぎてしまう前に、専門家の力を借りることもぜひ検討してください。

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