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相続コラム

第56回相続コラム 相続人の中に未成年者がいる場合の相続放棄

数回にわたって相続放棄に関するコラムを連載していますが、今回のコラムでは、相続人の中に未成年者がいる場合の相続放棄に関する手続きや注意点を解説したいと思います。

 

相続放棄の効果は個別

相続放棄をすると、放棄した者は、はじめから相続人ではなかったことになりますが、その効果は、放棄を選択した者にのみ及びます。

例えば、ある人が多額の借金を残して亡くなり、その相続人として、長男と長女がいたとします。長男が相続放棄をしたとしても、その効果は長女には及ばないため、長女は依然として相続人のままとなり、借金を相続することになります。

両者とも、多額の借金を相続しないためには、ひとりひとりが別個に相続放棄の手続きをする必要があります。

ちなみに、上記の例で、長男と長女の両者が相続放棄した場合で、故人に親や兄弟姉妹がいる場合には、子に代わって次順位の法定相続人である親や兄弟姉妹が相続人となるため、注意が必要です。

詳しくは「第51回相続コラム 相続放棄を利用する際に注意したいこと」をご覧ください。

 

相続人である子が未成年の場合

相続放棄の効果は、個別に考える必要があるため、放棄を選択する者、それぞれが行う必要があります。

相続人である子が成年に達している場合には、特に問題はないのですが、その子が未成年者である場合には、事情が異なります。

未成年者は、法的には、判断能力が未熟と考えられているため、相続放棄のような遺産を相続するか否かという重要な行為を単独で行うことはできません。

未成年者が相続放棄のような法律行為を行うためには、法定代理人に行ってもらうのが通常です。

未成年者の法定代理人は親権者なのですが、その親権者は、相続放棄の場面では、利害が衝突するケースがあります。未成年者本人と親権者との間で、利害関係が衝突する場合(利益相反関係)には、親権者は代理人となることはできず、裁判所に申し立てを行い、特別代理人という者を選任してもらう必要があるのです。

そして、選任された特別代理人が、未成年者に代わって法律行為を代理することになります。

 

具体例で解説

夫が亡くなり、妻と未成年の子のみが相続人というケースで、仮に子が相続を放棄すると、相続人は妻のみとなるため、子が自身の相続分を放棄すると、妻の相続分が増えるという関係になります。つまり、利益相反関係が認められます。
上記のようなケースでは、通常、妻は未成年の子の代理人とはなれないので、特別代理人の選任が必要となります。

もっとも、裁判例によると、妻も子も相続放棄するような場合には、利益相反するような関係は特に認められないため、特別代理人の選任は不要で、妻が未成年の子を代理して同時に相続放棄をすることができます。また、同様に、妻がまず単独で相続放棄を行い、後に、未成年の子を代理して相続放棄することも認めれています。

逆に、先に未成年の子を代理して、その子の相続について親が相続放棄をすることは利益相反となるため、認められません。あえて未成年の子について先に相続放棄することはないでしょうが、その場合には特別代理人の選任が必要となってしまいます。相続財産がプラスなのかマイナスなのかは、相続放棄の手続きを受ける裁判所には不明なため、形式的に利益相反の有無は判断されるからです。

 

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