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相続コラム

第55回相続コラム 注意したい故人の入院費の支払と相続放棄

故人が亡くなる前に、病院に入院していたというケースは非常に多くあります。故人が亡くなった後に、治療費や入院費が、病院から相続人宛に請求される場合があります。故人が多額の借金を残していたような場合には、相続放棄を選択肢として検討したいところですが、相続人が入院費等を支払ってしまうと相続放棄ができるなる危険性があります。今回のコラムでは、故人の入院費と相続放棄について解説したいと思います。

 

入院費と相続放棄

治療費や入院費も、法律上は、基本的には通常の負債と何ら変わりはありません。ですので、故人が負っていた入院費等の支払義務は、相続によって相続人に移転しますが、相続放棄を選択する場合には、相続人は、故人の負債を支払う必要はありません。

故人の生前、医師の先生や看護師さんに大変お世話になったのに、治療費や入院費を支払わないのは申し訳ない、しのびないと考える方も少なくないと思います。

そのような場合には、故人の財産からではなく、ご自身の財産から支払うことをおすすめします。故人の財産を消費してしまうと、「故人の遺産を相続する意思がある」と法律上みなされ(法定単純承認)、相続放棄ができなくなる危険性があるからです。

法定単純承認について詳しくは
第51回相続コラム 相続放棄を利用する際に注意したいこと」をご覧ください。

 

入院費を支払う必要がある場合

 

保証人になっている

故人が負っていた債務は、相続放棄をされる場合には、相続人が受け継ぐことはないので、基本的には、治療費や入院費を相続人が支払う必要はありません。

ただし、本人(故人)が入院する際に、ご家族(相続人)が治療費や入院費について保証人や身元引受人となっていることがあります。身元引受人がどうような義務を負うのかは、法律上の制度ではないため、一概には言えませんが、一般的には、入院の際の誓約書等に、「治療費・入院費用、それに伴う諸費用は本人及び身元引受人が責任をもって支払う」などの記載があり、身元引受人は保証人的役割を担う場合がほとんどです。

上記のような場合には、相続人は、相続放棄によって故人の支払義務は相続しないとしても、保証人や身元引受人という立場で入院費の支払義務を負うことになりますので、その場合には、入院費等を支払う必要があります。

当然ですが、保証人や身元引受人という立場で入院費を支払う以上、それは自己の財産から支出するのであって、故人の遺産から支払うと法定単純承認にあたり、相続放棄ができなくなる危険性があるので注意が必要です。

 

相続人が故人の配偶者の場合

法律上、夫婦には、日常的な生活で負うべき債務については、連帯して責任を負うという決まりがあります。

日用品の購入や光熱費の支払等、夫婦が通常の生活を営むのに必要な費用については、取引の相手としては、夫婦双方を取引の相手と考えるのが普通だからです。

入院費等についても、夫婦の日常生活を営むのに必要な法律行為にあたると一般的には考えられるため、配偶者の負債を相続放棄によって相続しなかったとしても、連帯責任として負っている自分の債務は支払う必要があります。

つまり、ご自身の連帯債務として、入院費を支払うことになります。

民法761条
夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責任を負う。ただし、第三者に対し責任を負わない旨を予告した場合は、この限りでない。

 

入院費等を支払ってしまった場合

相続放棄をされる場合には、入院費等を故人の遺産から支払ってしまうと、法定単純承認とみなされ、相続放棄が認められなくなる危険性があるため、どうしても支払う場合には、ご自身の財産から支出するのが理想です。

既に誤って入院費等を故人の財産から支出してしまった場合には、相続問題に強い弁護士に相談することをおすすめします。ケースによっては相続放棄が可能な場合があるからです。

少し専門的なお話しになりますが、法定単純承認にあたり、相続放棄ができなくなるのは、遺産の全部または一部を「処分」した場合です。既に内容が確定し弁済期が到来している故人の債務を支払うのは、財産の「処分」ではなく、財産の「保存」行為と考えることもできるので、そのように考えると未払いの入院費等を相続財産から支払っても、相続放棄ができる余地があります。

ただ、どのような債務の支払なら、保存行為として認められるのかは、専門的判断が必要となりますので、誤って故人の財産から入院費等を支払ってしまった場合には、相続に詳しい弁護士にまずは相談してください。

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