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相続コラム

第54回相続コラム 後から多額の借金を発見した場合、相続放棄はできるのか

故人が遺した多額の借金。その相続を避けるためには、相続放棄をするのが一般的な対応となります。相続放棄をすると、初めから相続人ではなかったことになるため、プラスの財産も相続することはできませんが、多額の負債を抱え込むことがなくなります。では、「借金の存在を知らずに放置していたが、後になって実は多額の借金のあることが判明した」というケースも少なくないところ、そのような場合に相続放棄はできるのでしょうか。今回のコラムでは、後に判明した借金がある場合に、相続放棄をすることができるのかについて解説したいと思います。

 

相続放棄の熟慮期間は3ヶ月

相続放棄をすることができる期間は、法律で定めれており、「自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内」となっています。この期間を熟慮期間と呼びます。

借金の存在を知ったのが、熟慮期間内であれば、通常どおり相続放棄をすることができますが、熟慮期間を過ぎている場合には、原則として、相続放棄をすることができません。

この熟慮期間は、家庭裁判所にお願いして、期間を伸長することができますが、熟慮期間を伸長する申し立て自体も「自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内」に行う必要があります。

例えば、熟慮期間ギリギリに、債権の督促状が届いたというような場合には、熟慮期間の伸長を申し立て、その後に相続放棄の手続きをすることができますが、熟慮期間経過後に借金の存在を知ったような場合には、この手段は使えません。

民法915条
相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。

 

熟慮期間経過後の相続放棄

熟慮期間経過後の相続放棄は、認められないのが原則ですが、一切相続放棄を認めないというのも不合理な結果となってしまいます。

例えば、熟慮期間中に、借金の有無を調査したが、債権者からの誤った回答により、借金はないものと思っていたが、熟慮期間経過後に、実は債権者の回答に誤りのあることが判明し、借金が発見されたというような場合に、相続放棄が一切認められないとすると何ら落ち度のない相続人に酷な結果となってしまいます。

上記のような事例で、下級審で相続放棄を認めた事例があります。

また、債権者に明確な落ち度はなかったとしても、相続放棄の熟慮期間を逆手にとり、あえて相続人に熟慮期間内には連絡せずに、熟慮期間経過後に、突如として督促状を送りつけるというようなケースに、相続放棄が認められないというのも問題があります。

この点、最高裁は、熟慮期間中に限定承認または相続放棄をしなかったのが、被相続人に相続財産が全く存在しないと信じたためであり、相続人がこのように信ずるについて相当な理由がある場合には、例外的に借金の判明時点を熟慮期間の起算点とする旨の判断をしています。

つまり、借金がないと信じていたとしても仕方がないような場合には、借金が判明してから3か月以内であれば相続放棄をすることができる例外も認めているのです。

ただし、上記の裁判例の捉え方については見解が複数あり、相続放棄ができるか否かの判断には高度な専門的判断が必要になりますし、「借金がないと信じ、そう信じる相当な理由」を上申し、家庭裁判所を説得するのにも専門的知識や弁護士の腕が問われます。熟慮期間経過後に借金が判明したような場合には、専門の弁護士に相談することをおすすめします。

参考:昭和59年4月27日最高裁判所判決
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=52168

 

相続財産調査は重要

熟慮期間経過後に借金が見つかった場合、例外的に相続放棄ができるケースもありますが、あくまで例外なため、相続放棄が必ずできるとは限りません。仮に、相続放棄ができないとなると、任意整理や、最悪、自己破産や個人再生などの法的整理が必要になってしまう危険性もあります。

そのようなリスクを回避するためにも、相続発生時には、遺産調査として、プラスの財産ではなく、故人の借金の有無をしっかりと調査することが重要になります。

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