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相続コラム

第53回相続コラム 葬儀費用を相続財産から支出すると相続放棄はできなくなるのか?

前回のコラムでは、相続放棄をした場合でも生命保険を受け取ることができるのかについて解説しましたが、今回のコラムでは、葬儀費用を相続財産から支出した場合でも、相続放棄ができるのかについて解説したいと思います。

 

相続放棄と単純承認(前提知識のおさらい)

相続放棄とは、遺産に対する相続権の一切を放棄することをいいます。相続放棄をすると、現金や預金、不動産などのプラスの財産だけではなく、借金などのマイナスの財産も相続しないことになります。

相続放棄の基本について詳しくは
第49回相続コラム 基本から学ぶ相続放棄とは」をご覧ください。

相続放棄をするためには、3ヶ月という期間制限の他にも、法定単純承認にあたる行為をしないように注意する必要があります。

遺産を使い込んでしまったり、遺産の一部を隠してしまったりすると、法律上、相続する意思がありとされ、相続放棄ができなくなってしまいます。これを法定単純承認といいます。

期間制限や法定単純承認について詳しくは
第51回相続コラム 相続放棄を利用する際に注意したいこと」をご覧下さい。

 

葬儀費用は相続財産から支出できるのか

例えば、親が多額の借金を残して亡くなった場合、その借金を相続しないようにするためには、相続放棄を検討することになります。しかし、いくら相続放棄をするからといっても、親の葬儀をしないわけにはいきませんし、その費用をどう捻出するのかが問題となります。

葬儀費用は、最近では家族葬などの比較的小規模な葬儀スタイルが浸透しつつあるとはいえ、少なくない額が必要になるのが通常だからです。

「葬儀費用を遺産から支払いたいが、遺産から葬儀費用を支払うと、その行為が単純承認にあたり、相続放棄ができなくなってしまうのではないか」と心配される方も多く、当事務所に相談に来られる方も少なくありません。

この点について、下級審の裁判例ではありますが、通常の常識的範囲内の葬式であれば、遺産から葬儀費用を支出しても、単純承認にはならず、相続放棄は可能としています。

しかし、故人の生前の身分や社会的地位にそぐわないあまりに豪華な葬儀を行った場合には、社会的儀式として必要な範囲を超えているとして、相続放棄が認められなくなる可能性がありますので注意が必要です。

大阪高等裁判所 平成14年7月3日決定
葬儀は、人生最後の儀式として執り行われるものであり、社会的儀式として必要性が高いものである。そして、その時期を予想することは困難であり、葬儀を執り行うためには、必ず相当額の支出を伴うものである。これらの点からすれば、被相続人に相続財産があるときは、それをもって被相続人の葬儀費用に充当しても社会的見地から不当なものとはいえない。また、相続財産があるにもかかわらず、これを使用することが許されず、相続人らに資力がないため被相続人の葬儀を執り行うことができないとすれば、むしろ非常識な結果と言わざるをえないものである。したがって、相続財産から葬儀費用を支出する行為は、法定単純承認たる「相続財産の処分」(民921条1号)には当たらないというべきである。

 

仏壇や墓石の費用について

仏壇や墓石の費用についても、葬儀費用と同様に、身分相応の常識的範囲内のものであれば、相続財産からその費用を支出したとしても、相続放棄は可能とされています。一般常識に照らしてあまりにも華美な仏壇や墓石を購入すると、相続放棄が認められなくなる危険性があるのも葬儀費用と同様です。

 

香典は相続財産ではない

現在の日本では、通常の葬儀の際には、香典として金銭を霊前に供えることが一般的です。

香典の法律的解釈としては、故人の葬儀に関する費用に充当することを目的として、葬儀の主宰者である喪主に対して渡される一種の贈与と考えられているため、香典は相続財産として扱われないのが通常です。

そのため、香典を葬儀の費用として充てたとしても、相続財産を使用したことにはなりませんので、相続放棄の可否には影響しません。

 

単純承認になってしまうか悩んだら弁護士に相談

常識的範囲の葬儀費用であれば、相続財産から支出しても、相続放棄は可能とされていますが、実際、どの範囲まで許容されるのかについては不明瞭な部分もあるため、被相続人に多額の負債があり、相続放棄を視野に入れている場合には、可能であれば相続財産以外から葬儀費用を捻出するか、最低限の葬儀に留めるのが無難といえます。

また、故人の遺産から葬儀費用を支払った場合には、葬儀費用の明細書や領収書などは、後に適切な支出であったことの証明に必要となるため、大切に保管しておくことが大事です。

許容される葬儀費用の範囲に悩んだり、相続放棄について悩んだ場合には、専門の弁護士に相談することをおすすめします。相続放棄自体についても、複雑な手続きや放棄ができる期間制限があるため、専門家のサポートがあると安心できます。

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