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相続コラム

第76回相続コラム 遺言をのこすべき理由・メリット-遺産分割協議との関係から解説

前回のコラムでは、遺言でできること、遺言の効力について解説しましたが、遺言に馴染みの薄い方からすれば、「遺言は具体的に何のためにのこすのか」、「遺言をのこすメリットは何か」気になるところではないでしょうか。今回のコラムでは、遺産分割協議との関係から、遺言をのこすべき理由、メリットについて解説したいと思います。

 

遺産分割協議と遺言との関係について

相続が発生した際に、遺産をどのように分配するのかは、遺言の有無によって変わってきます。

遺言がある場合の相続

相続が発生し、被相続人(亡くなった方)が遺言をのこしていた場合、遺産はその遺言に従って分配されるのが原則となります。遺言に具体的な遺産の分配方法が記載されいなければ別ですが、通常であれば、遺言には、誰に何を相続させるのか記されているため、遺産分割協議等を経なくとも、遺言どおりに、そのまま遺産を分配することが可能です。

なお、遺言があったとしても、遺産分割協議を行うこと自体は可能です。重要なのは、遺言があれば、遺産分割協議を行う必要はないという点です。

遺言がある場合に、遺産分割協議を行うことの可否について詳しくは
第44回相続コラム 遺言とは異なる内容の遺産分割協議はできるの」をご覧ください。

 

遺言がない場合の相続

相続が発生し、被相続人が遺言をのこしていなかった場合、遺産を分配するためには、遺産分割協議が必要となります。

少し専門的なお話しにはなりますが、相続が発生すると、自動的に相続人に財産等が移転することにはなりますが、その段階では、遺産は相続人間で抽象的な共有財産として受け継がれることになるため、具体的に、誰が何をどのくらい相続するのかは未確定の状態となります。そのような抽象的な共有状態を解消し、具体的に誰が何を相続するのか確定させるためには、遺産分割協議という相続人間の話し合いにより、最終的な財産の帰属を確定させる必要があるのです。

また、法律上、遺産分割協議を行うことは必ずしも義務とはされていませんが、例えば、凍結された故人の銀行口座の凍結を解除したり、不動産の名義変更である相続登記を行うためには、遺産分割協議書の提出が必要となるため、事実上、遺産分割協議が必須となります。特に相続登記は義務化され、罰則も制定されているため、重要です。

遺言があれば、遺産分割協議書に代えて遺言を提出することができますが、遺言がない場合には、遺産分割協議を行い、遺産分割協議書を作成する必要があるということになります。

 

遺産分割協議には時間も手間もかかる

遺産整理、相続手続きには、遺言または遺産分割協議書が必要となりますが、遺産分割協議を有効に成立させるためには時間も手間もかかります。

遺産分割協議が有効に成立するためには、相続人「全員」の合意が必要となります。

この「全員」というのが曲者で、ひとりでも同意が得られなかったり、反対する者がいる場合には、その協議は無効となってしまうため、全員の合意を形成するのは容易ではないことは想像に難くないと思います。

特に下記のようなケースに当てはまる場合には、合意が困難になったり、手続き的な負担が非常に大きくなることが予想されます。

相続人の人数が多い

およそ「協議」というものは、お互いの意見・主張をすり合わせる作業が必要になるので、相続人の人数が多くなればなるほど、お互いの利害が衝突し、意見が食い違う確率が高くなります。また、場合によっては、合意どころか争いに発展するケースも少なくありません。

相続人同士が遠方に住んでいる

相続人の中に遠方に住んでいる方がいる場合には、そもそも協議を行うこと自体が容易ではありません。また、実際に、遺産分割協議が成立し、遺産分割協議書を各種手続きで用いる際には、その都度、遺産分割協議書を郵送して、署名・捺印、さらに印鑑証明書も付けて返送してもらうなどの面倒な事務作業が増えてきます。

相続人の中に重い病気を患っている方がいる

相続人の中に重い病気を患っている方がいる場合も、協議に参加すること自体が難しかったり、事務的な協力を依頼することも容易ではありません。

相続人の中に認知症の方がいる

相続人の中に認知症の方がいる場合の遺産分割協議について詳しくは、
第15回相続コラム 相続人の中に認知症の方がいる場合の遺産分割協議」をご覧ください。

相続人の中に未成年の方がいる

相続人の中に未成年の方がいる場合の遺産分割協議について詳しくは、
第16回相続コラム 未成年の相続人がいる場合の遺産分割協議と特別代理人」をご覧下さい。

相続人の中に行方不明の方がいる

続人の中に行方不明の方がいる場合の遺産分割協議について詳しくは、
第17回相続コラム 相続人の中に行方不明者がいる場合の遺産分割協議」をご覧ください。

 

遺言をのこすべき理由・メリット

まとめになりますが、遺産整理・相続手続きには遺言または遺産分割協議書、そのどちらかが必要となりますが、遺産分割協議書の作成には手間がかかり、また、「協議をする」ということ自体が争いに発展する危険性を常に秘めています。

その点、遺言があれば、遺産分割協議書が不要となるため、手続き的負担を大幅に軽減し、また、相続人間での協議を省くことによって、争いのもとを絶つことにつながります。

遺産分割協議を省き、相続人の手続き的負担を大幅に軽減し、相続人間の争いを未然に防ぐことにできる、というのが、遺言をのこすべき理由、メリットといえるでしょう。

 

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