
再婚が珍しくなくなった現在、「連れ子と相続」の問題に直面する家庭も増えています。
実際に、再婚後に長年一緒に暮らし、実の親子同然の関係を築いているケースは少なくありません。そのため、「当然、相続もできるはず」と考えている方も多いのではないでしょうか。
しかし、法律上の相続では、“一緒に暮らしていた”、“親子のように育ててきた”という事情だけでは、相続権が認められないことがあります。
特に、再婚家庭では、実子・連れ子・前婚の子どもなど、複数の家族関係が存在することも多く、相続の場面でトラブルが生じやすい傾向があります。
そこで本記事では、連れ子に相続権があるのか、実子との違いは何か、そして将来の争いを防ぐためにどのような対策が必要なのかについて、わかりやすく解説します。
連れ子に相続権はある?
結論からいうと、連れ子には、原則として相続権はありません。
例えば、ある母子がおり、母親が男性と再婚したとします。母親の連れ子が母親の再婚相手である男性と実の親子同然の関係を築き、長年同居していたとしても、その連れ子は男性の相続人とはならないが原則となります。
もちろん、連れ子は母親の子なので、母親の相続人にはなれますが、連れ子からみた男性は、母親の再婚によって母親の夫にはなっていますが、それだけでは連れ子と男性の間に親子関係は発生していないのです。法律上は、親子ではなく、単に一親等の直系姻族という扱いになります。
そのため、たとえ「父親同然に育ててもらった」「家族として何十年も暮らしてきた」という事情があったとしても、法律上は相続人にならないのが原則なのです。
この点は、一般の感覚と法律上の扱いにズレが生じやすく、相続トラブルの原因になりやすい部分でもありますので注意が必要です。
養子縁組をすると相続権が発生する
もっとも、連れ子でも、養子縁組をしている場合には相続権が認められます。
養子縁組とは、法律上の親子関係を新たに発生させる手続です。再婚相手と連れ子が養子縁組を行うと、その連れ子は法律上「子」として扱われることになります。
先述の例で言うと、母親の夫と母親の連れ子が養子縁組を行うと、両者の間に親子関係が発生するので、母親の夫が連れ子の父親になります。
養親である父親が亡くなった場合には、子は第一順位の法定相続人として相続権を有するため、連れ子は、母親の夫の相続人となるというわけです。
なお、相続において、実子も養子も基本的に同じ立場となります。
具体的には、父親に実子1人と養子縁組した連れ子1人がいる場合、原則として両者の相続分は同じですとなり、「実子のほうが多く相続できる」ということはありません。
また、養子縁組をしても、通常は実親との親子関係がなくなるわけではありません。そのため、連れ子は実親の相続権を維持したまま、養親の相続権も取得することになります。
例えば、ある夫婦がおり、その夫婦には子がいたとします。その子は、母親・父親、双方の相続人となります。仮にその夫婦が離婚したとしても、親子関係が消滅するわけではないので、子は、自身の実の親の相続権を有し続けます。離婚後、実の親が再婚し、その再婚相手と養子縁組した場合には、養親に対する相続権も発生するため、実親と養親の双方に対する相続権を有することになります。
再婚家庭で相続トラブルが起こりやすい理由
再婚家庭の相続では、一般的な相続以上に感情的な対立が生じやすい傾向があります。
その理由の一つは、「法律上の家族」と「実際の家族関係」が一致しないケースが多いためです。
たとえば、長年一緒に生活し、介護まで担ってきた連れ子がいたとしても、養子縁組をしていなければ相続権はありません。一方で、長年疎遠だった実子には法定相続権があります。
すると、連れ子側からすれば、「これだけ尽くしてきたのに何も相続できないのか」という不満が生じやすくなります。
また、再婚家庭では、被相続人本人が「家族関係が複雑になるから」と考え、生前に十分な整理をしないまま亡くなってしまうケースも少なくありません。
しかし、相続対策を先送りにすると、残された家族同士の対立が深刻化する可能性があります。
実際、遺産分割協議がまとまらず、長期間にわたり親族関係が悪化してしまうケースもあります。
連れ子に財産を残したい場合の対策
では、連れ子に確実に財産を残したい場合には、どのような対策を取ればよいのでしょうか。
もっとも確実な方法の一つは、養子縁組を行うことです。
養子縁組をすれば、連れ子は法律上の子どもとなり、法定相続人になります。そのため、遺言書がなくても相続権を主張できます。
もっとも、養子縁組には相続関係だけでなく、戸籍や親族関係にも影響があります。そのため、家族間で十分に話し合ったうえで進めることが重要です。
また、養子縁組をしない場合でも、遺言書を作成することで、連れ子に財産を残すことは可能です。
たとえば、「連れ子に自宅を相続させる」「預貯金の一部を遺贈する」といった内容を遺言書に明記しておけば、被相続人の意思を反映しやすくなります。
もっとも、遺言書があっても、他の相続人には遺留分が認められる場合があります。
たとえば、実子がいるケースでは、実子の遺留分を侵害するような内容になっていると、後に遺留分侵害額請求を受ける可能性があります。
そのため、「連れ子に財産を残したい」という希望だけでなく、「他の相続人とのバランスをどう取るか」という視点も重要になります。
さらに、財産の内容によっては、家族信託や生前贈与などを活用したほうが適しているケースもあります。
特に、不動産を誰に承継させるかで揉める可能性が高い場合には、早い段階から専門家へ相談することをおすすめします。
相続では“家族の認識”と“法律”が一致しないことがある
再婚家庭では、「家族として一緒に暮らしてきた」という実感と、法律上の権利関係が一致しないことがあります。
しかし、相続は感情だけで解決できるものではなく、最終的には法律に基づいて処理されます。
そのため、「うちは仲が良いから大丈夫」と考えていても、実際に相続が始まると、思わぬ対立が生じることがあります。
特に、連れ子の相続問題は、家族関係が良好であるほど、かえって法的整理が後回しにされやすい傾向があります。
だからこそ、元気なうちに、誰にどの財産を残したいのか、法的にどのような対策が必要なのかを整理しておくことが大切です。
おわりに
連れ子は、再婚しただけでは相続権を取得しません。法律上の相続権を得るためには、養子縁組などの手続が必要になります。
もっとも、実際の再婚家庭では、「長年育ててきた連れ子にも財産を残したい」と考える方は少なくありません。
そのような場合には、養子縁組や遺言書の作成など、状況に応じた対策を早めに検討することが重要です。
再婚家庭の相続は、法律関係だけでなく、家族間の感情も複雑に絡み合います。後々のトラブルを防ぐためにも、不安がある場合には、早めに弁護士へ相談することをおすすめします。
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