前々回のコラムでは相続人の中に認知症を患っている方がいる場合、前回のコラムでは未成年者の方がいる場合の遺産分割協議について解説しました。今回のコラムでは、相続人の中に行方不明の方がいる場合の遺産分割協議について解説したいと思います。
行方不明者を無視して遺産分割協議はできない
弁護士として、相続や遺産分割協議について、広く相談を受けていますが、意外と多く相談を受けるのが、相続人の中に行方不明の方がいるケースです。「行方不明」というと大げさに聞こえなくもないですが、家庭の事情等により長い期間、音信不通というのはよくあります。連絡を取ろうにも、どこに住んでいるか不明だったり、いざ携帯電話に連絡すると、番号が変わっていて連絡がつかない、という話はよくあります。
行方不明、音信不通といっても、程度は様々ですが、弁護士として上記のような相談を受けると、戸籍を辿ったり様々な方法で相続人の調査をします。調査の結果、相続人を探し出すことができる場合もありますが、調査してもどうしても行方がわからない場合もあります。
遺産分割協議は、相続人全員で行う必要があるため、たとえ行方不明の方がいたとしても、その方を無視して協議を進めることはできません。仮に行ったとしても、協議自体が無効になってしまい、その後の手続きを進めることはできません。
相続人の中に行方不明の方がいる場合の対応
戸籍収集から住所の調査
相続人の中に、所在不明の相続人がいる場合、まずは相続人の戸籍や住民票、戸籍の附票を取得し、住所を特定することから始めます。
他の相続人にとっては、所在が不明でも戸籍や住所を弁護士の職権等や調査会社に依頼することによって、住所を探し出すことが可能の場合が多いのです。
そのため、連絡先やどこに住んでいるかわからない相続人がいたとしても、まずは住所を探し出して、そこに連絡書などを送り、実際にそこに住んでいるかどうかの調査をしたうえで、連絡が取れた場合は、そのまま遺産分割協議に進むことになります。
不在者財産管理人の選任申し立て
住所を探し出せても実際にそこに住んでいるとは限りません。日本国内にいる場合はもちろん、海外にいる場合などでも所在が不明な場合があります。
相続人の中に行方不明者がいる場合には、そのままでは遺産分割協議を進めることができないので、家庭裁判所に不在者財産管理人というものを選任してもらい、その不在者財産管理人に行方不明者の代理人になってもらい、遺産分割協議を進める方法があります。
不在者財産管理人とは、その名のとおり、不在者=行方不明者の財産を管理する権限を有する者になります。不在者財産管理人については、一般的に弁護士などの第三者が選任されることが多いです。
認知症の方の代わりに成年後見人、未成年者の代わりに親権者や特別代理人が協議に参加するのと同じように、不在者財産管理人と遺産分割協議を進めることになるのです。
失踪宣告の申し立て
不在者財産管理人を選任する場合には、基本的に行方不明者本人が生きていることを前提にしています。しかし、行方不明、音信普通の原因が、災害などに巻き込まれて生死不明の状態などの場合には、失踪宣告の申立てという方法もあります。
失踪宣告とは、生死不明の者がいる場合に、その者を法律上死亡しているとみなすための手続きになります。失踪宣告が認められるためには、法律上のいくつかの条件を満たさなければなりませんが、それが認められると、行方不明者は既に死亡していると法律上みなされるため、行方不明者なしで遺産分割協議を進めることが可能となります。
相続人の中に行方不明者がいる場合には、弁護士へ相談することをおすすめします。
不在者財産管理人の選任申立ても失踪宣告の申立ても、いずれも家庭裁判所に対して申し立てる必要があるため、一般の方が手続きを進めるのは容易ではありません。弁護士にご相談いただければ、相続人調査として探すことも可能ですし、仮に探し出すことができなかった場合でも、上記の、不在者財産管理人選任申立て等の手続きにスムーズに移行することが可能です。
当事務所では、相続に関して多くの相談を受けている弁護士が、初回無料で相談を受け付けております。また、相談時には、時間制限を設けておりませんので、どのような手段で何ができるかをわかりやすく丁寧にご説明いたします。相続人の中に行方不明、音信不通の方がいてお困りの方は、お気軽にご相談ください。