相続でよく争いになるのが、遺産が隠されているというケースです。本当に遺産が隠されていたため争いになるケースもありますが、実際には、故人の財産を管理していた相続人が、十分な情報を教えてくれないために、「遺産を隠しているのではないか？」、「知らないうちに使い込みがあるのでは？」と疑い、争いに発展するケースが多くあります。今回のコラムでは、遺産が隠されている、故人の遺産の情報を教えてもらえない場合の対処法について解説したいと思います。

遺産隠し・使い込み

遺産を、悪意を持って使い込む人もいれば、相続人の介護等をしていたため、「あれだけ介護をしたのだから人件費として、これくらいお金をもらって当然」という考えから、勝手に自己判断でお金を使い込むなど、様々なケースがあります。

また、故人が亡くなる前に、例えば、故人のお世話をしていたため、生活費を銀行から引き出すついでに、自分のお小遣いも引き出して使っていたなど、生前に使い込んでいるケースも多くあります。

遺産の調査

遺産隠しや使い込みを疑った場合には、故人の遺産を調査する必要があります。遺産の調査については、全財産が網羅的にパッと把握できるという魔法のような方法は、今のところ存在しないので、ひとつひとつ根気よく調査する必要があります。

銀行預金の調査

銀行に口座を持っていない人は少ないため、故人の口座を把握するために、銀行に照会をかけます。相続人であれば、相続財産の保存行為として、単独で銀行に照会をかけることができます。銀行への照会により、故人が所有していた預金口座の取引履歴を開示してもらい、そこから、不自然な出金や多額の出金がないかなどを調査し、使途を追求していくことになります。

照会をかけるべき銀行の支店は、故人の通帳や郵便物などから判明することもありますが、不明な場合には、故人の最後の住所地で、近隣の銀行支店すべてに照会をかけるなどの対応が必要になることもあります。最近ですと、インターネットバンキングなどを利用されている方も増えているので、パソコンやメール、スマホなどの履歴から辿るという手もあります。

不動産の調査

不動産を所有していると、固定資産税がかかるので、市町村から固定資産税の納付書が送付されてきます。そこには課税明細書というものが同封されており、課税された不動産を特定することができます。また、各市区町村には、地域内の不動産所有者を記録した「名寄帳」というものがありますので、同一地域内に複数不動産を所有している場合に一覧で所有不動産を確認することができるので、不動産の調査に非常に有効な手段となります。

株式や社債などの証券の調査

故人が株式や社債などの証券を保有している場合には、銀行と同様に、証券会社に照会をかけることになります。

どこの証券会社で株式を保有しているかは、郵便物やメールなどから割り出すのですが、何ら手がかりがない場合には、証券保管振替機構(「ほふり」と呼ばれる)に開示請求することで、故人がどこの証券会社に株式を預けてるか調査することができます。

遺産の調査で困ったら弁護士に相談

遺産隠しを調査するのは、根気良く地道に照会をかけるという作業が必要であったり、実際に照会の際には求められる書類も多くあり、時間的・精神的負担が多くかかります。また、「これをすれば全部遺産がわかる」という方法も存在しないため、調査には、どこにどう当たりをつけたらいいのかなど、知識と経験が物を言うという側面があります。

当事務所は、多くの相続案件に携わってきた専門の弁護士が在籍します。皆様の手続き負担を軽減しつつ、実際に遺産の不正利用が見つかった場合の対応を含めて、全力でサポートいたします。無料相談も実施しているので、他の相続人が遺産を隠している、情報を開示してくれなくて困っているという方は、お気軽に当事務所にご相談ください。