近年、相続対策等で、養子縁組が利用されるケースも増えておりますが、ご自身の両親が養子縁組した場合、両親が亡くなった際の相続分や、ご自身が亡くなった際の法定相続人は誰になるのか、疑問に思う方も少なくありません。今回のコラムでは、両親が養子縁組した際の相続分や、養子の兄弟姉妹がいる場合の相続人について解説したいと思います。
養子と実子の相続分
結論から言いますと、養子と実子の間に、相続分の違いはありません。
民法第809条では、「養子は、縁組の日から、養親の嫡出子の身分を取得する。」とされており、養子縁組が成立すると、その日から、養子は通常通り、子の身分を取得します。つまり、民法上は、養子も実子と同じ扱いを受けるため、相続分や遺留分について、実子と同じ権利を有することになります。
例えば、ある夫婦にA、B、Cの3人に子(実子)がいたとします。そして、その夫婦はDと養子縁組を結んだとします。仮に夫婦の一方が亡くなったとすると、その相続人は、生存配偶者と養子を含めた4人の子ということになります。子の相続分は、生存配偶者の相続分である1/2を除いた、遺産全体の1/2となり、それを子4人で均等に分けることになります。旧民法下では、養子の相続分は実子の1/2という規定もありましたが、現行法では、養子と実子との間に権利の差異はないため、均等となります。
ただ、あくまで民法上、相続分が同じというだけで、税法上は養子と実子が異なる扱いを受ける場合がありますので、注意が必要となります。
養子の兄弟姉妹間の相続
自分の両親が、自分の与り知らないところで養子縁組をしており、兄弟姉妹が知らない間に増えていた場合、その者は自分の相続人となるのでしょうか。
例えば、Aさんには、兄のBがおり、両親が養子縁組したCという妹がいたとします。Aさんに子がいれば、Aさんの相続人はAの子ということになり、特に問題はないのですが、仮にAさんに子がいなく、また、両親も他界している場合には、Aさんの相続人は兄弟姉妹となるのですが、その兄弟姉妹とは兄のBのみを指すのか、または妹Cも含まれるのでしょうか。
民法727条では、「養子と養親及びその血族との間においては、養子縁組の日から、血族間におけるのと同一の親族関係を生ずる。」と定められているため、Cも問題なくAの兄弟姉妹になります。ですので、Aさんの相続人は、BとCということになります。
全血兄弟姉妹と半血兄弟姉妹
兄弟姉妹が相続人となる場合、その取り分たる相続分は、全血兄弟姉妹と半血兄弟姉妹とで異なります。
全血兄弟姉妹とは、父母双方を同じくする兄弟姉妹のことをいいます。上で挙げた例のCさんは『両親』と養子縁組しているため、全血兄弟姉妹にあたります。
半血兄弟姉妹とは、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹のことをいいます。例えば、異母兄弟などが半血兄弟にあたります。また、両親の一方とだけ養子縁組を結んだ場合も、半血兄弟姉妹にあたると考えられています。
そして、民法900条第4項但書では、「父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。」と定められており、半血兄弟姉妹の相続分は、全血兄弟姉妹の半分となります。
おわりに
今回のコラムでは、両親が養子縁組した際の相続分や、養子の兄弟姉妹がいる場合の相続人について解説しましたが、いかがだったでしょうか。家族関係は、それこそ十人十色で、ケースによっては、相続人が誰なのか、相続分はどうなるのか、判断に迷うケースも少なくありません。家族関係が複雑になると、その分、相続手続きも複雑化し、また、ケースによっては相続分の解釈の違い等により争いごとに発展してしまうおそれもあります。複雑な相続関係で困りごとがある場合には、専門の弁護士に相談することをオススメします。
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