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相続コラム

第106回相続コラム 養子縁組が相続対策に利用される理由

『養子縁組が相続対策に有効』という話しを聞いたことがあるでしょうか。養子縁組は活用法次第で相続対策に有効な場面がありますが、注意しなければならない点もあります。今回のコラムでは、そもそも養子縁組とは何か、養子縁組が相続対策になぜ利用されるのか、その注意点と合わせて解説したいと思います。

 

養子縁組とは

養子縁組とは、養親と養子との間に法律上の親子関係を作り出す制度のことをいいます。簡単に言うと、養子縁組は、血縁関係がなくても、法律の力によって親子関係を生み出す制度と言えます。養子縁組によって親になった者を養親(ようしん)、子になった者を養子(ようし)と呼びます。

養子縁組が成立すると、血縁関係がある実子と同様に、養子も養親の法定相続人となります。

 

養子縁組には2種類ある

養子縁組には、『普通養子縁組』と『特別養子縁組』の2つの種類があります。両者は、実の親との親子関係に影響するかどうかという点が異なります。

普通養子縁組は、養子縁組が成立したとしても、実の親との親子関係に一切影響はありません。少し複雑に聞こえるかもしれませんが、普通養子縁組が成立すると、親子関係が複数存在することになります。例えば、相続との関係で言うと、養子は養子縁組によって、養親との関係で、法定相続人になりますが、実の親とも親子関係は継続してるので、実親との関係でも法定相続人のままとなります。

それに対して、特別養子縁組は、実の親との親子関係を断ち切り、新たに養親との間に親子関係を発生することになります。特別養子縁組によって養子となった者は、養親の法定相続人になりますが、実の親との親子関係は法律上消滅しているため、実の親との関係では、法定相続人たる地位を失うことになります。

特別養子縁組は、実の親との親子関係を断ち切るという特別な効果が発生するため、家庭裁判所の許可が必要となったり、また、そもそも養子となる者が6歳未満であることが要求されるため、相続対策で通常検討されるのは、普通養子縁組となります。

 

養子縁組が相続対策に利用される理由

養子縁組が相続対策に利用される主な理由は、血縁関係にない者に相続権を与えることができたり、法定相続人の数を増やすことによって、税金の控除枠や非課税枠を増加させることが可能だからです。

 

血縁関係のない者に遺産を譲る

当然ですが、被相続人とは無関係の赤の他人は相続人にはなれません。遺言などで遺産を譲ることはできますが、遺言はいつでも撤回が可能ですし、不備があると無効となってしまうなど、不確定な要素も存在します。また、他人への贈与と相続では、財産を譲り受けた際の税金が異なります(贈与税は、通常、相続税より高額)。

例えば、「長年献身的に介護してくれた、子の配偶者に遺産をのこしたい」というようなケースで、子の配偶者を養子にすると、遺言よりも確実に遺産を残すことが可能となり、また、遺産を取得した際の税金も、通常、安く抑えることができます。

 

相続税の節税効果

相続税を計算する際には、基礎控除枠というものがあり、その計算式は「3,000万円+600万円×法定相続人の人数」という式で表されるため、法定相続人の人数が増えると、600万円分の控除枠が増加することになります。

さらに、相続税を計算する際の税率は、課税対象となる取得金額が増えれば増えるほど、その率も上がってしまうため、遺産を受け取る頭数を増やし、1人あたりの取得金額を減らすと、税率も下がることができます。

また、相続そのものではありませんが、生命保険金や死亡退職金の非課税枠も、法定相続人が増えると、その分非課税枠が増えるため、法定相続人が増えることは同様に節税効果が見込めるということになります。

 

相続税対策時の注意点

相続対策や相続税対策などに、利用法次第では、便利な手段となる養子縁組ですが、いくつか注意点すべき点もあります。

 

控除枠には限度がある

養子の数に、民法上は特に制限はありませんが、相続税法上は、「基礎控除の人数」に算入できる養子の数に以下のような制限が設けられています。

■養親に実子がいる場合は、法定相続人に算入可能な養子の数は1人まで
■養親に実子がいない場合は、相続税法上の法定相続人に算入可能な養子の数は2人まで

つまり、例えば、「3人いる孫を相続税対策として、全員養子にする」というようなことをしても、3人分、控除枠が増えるかというとそうではないということです。

 

2割加算制度

相続税法には、いわゆる「2割加算制度」というものがあり、遺産を受け取った人と被相続人との関係によっては、相続税額が2割加算される場合があります。

代表的な例では、孫を養子にしたような場合です。

孫を養子にすると、祖父母から孫へ、1世代とばして財産を承継させることができるため、2次相続も考慮したトータルで見ると、大幅に相続税を節約できるようにも思われますが、相続税の2割加算の対象となるため、ケースによっては、むしろ税金が高くなるおそれもあります。なお、代襲相続が発生した場合には、2割加算の適用はありません。

 

節税目的の養子縁組は否認されるリスクも存在する

「相続税の負担を不当に減少させる結果」となる場合には、相続税法上、養子縁組が否認され、控除の際の頭数には算入できなくなる可能性があります。

ただ、最高裁は「節税目的の養子縁組であっても直ちに無効とは言えない」と判示しているため、節税目的の養子が全て否定されるわけではありません。また、例えば、孫を養子にするようなケースでは、通常、節税目的以外の何らかの理由も存在すると考えられるため、余程の理由がない限り否認されるケースは少ないと考えられます。

 

おわりに

今回のコラムでは、そもそも養子縁組とは何か、養子縁組が相続対策になぜ利用されるのか、その注意点と合わせて解説しましたが、いかがだったでしょうか。今回のコラムの主眼は、養子縁組が相続対策・相続税対策にどのように活用されているのかを紹介することにあるため、細かい要件や計算式は省かせて頂きましたが、それらはまた別の機会に紹介したいと思います。実際に、養子縁組を相続対策で利用する際には、詳細なシミュレーション等が重要となりますので、専門家に相談することをオススメします。

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