法定相続分とは、法律で定められた『遺産の取り分』のことをいいます。相続分の基本については「第121回相続コラム 相続の基本 相続分について解説」で解説しましたが、今回のコラムでは、配偶者の視点で、法定相続分はどうなるのか具体的に解説していきたいと思います。
相続分のおさらい
法定相続分とは、法律によって定められた、相続人の相続財産に対する割合的持分のことをいいます。簡単に言うと、法律で定められた相続人の“遺産の取り分”のことをいいます。
相続分という用語には、①法定相続分以外にも、②指定相続分や③具体的相続分というような使われ方もありますが、単に“相続分”と使うときには、一般的に、①の法定相続分のことを指します。本コラムでも、相続分=法定相続分として用います。
相続分は、誰が相続人となるかによって、その割合が異なってきます。また、誰で相続人となるかは、法律で定められた順位を元に決められます。すわなち、先順位の相続人がいる場合には、後順位の相続人は、一切遺産を相続することができません。
詳しくは
「第121回相続コラム 相続の基本 相続分について解説」をご覧ください。
配偶者の相続分
配偶者は、他の相続人とは異なり、常に相続人となります。つまり、他にどんな相続人がいようとも配偶者は常に相続人として遺産を相続することができます。ただし、他の相続人が誰であるかによって、相続分の割合が異なってきます。
配偶者と子が相続人となる場合
配偶者と子が相続人となる場合には、配偶者の相続分は1/2、子の相続分は1/2となります。子が複数人いる場合には、子全体の取り分である1/2を、頭数で均等に割ります。例えば、子が3人いる場合には、それぞれの子の相続分は、1/6ずつということになります。
ちなみに、日本の法律では、重婚が禁止されており、また、相続人となる「配偶者」には、内縁関係のパートナーは含まれないため、配偶者が複数人になることはありませんので、配偶者の相続分を頭数で割るというようなことはありません。
また、よくある間違いとして、離婚した元配偶者も、相続人資格のある「配偶者」にはあたりませんので注意が必要です。
配偶者と直系尊属が相続人となる場合
配偶者と直系尊属が相続人となる場合には、配偶者の相続分は2/3、直系尊属の相続分は1/3となります。直系尊属とは、父母・祖父母など自分より前の世代で、直通する系統の親族のことをいいます。
例えば、ある人が亡くなり、その相続人として、配偶者と両親がいたとします。この場合、それぞれの相続分は、配偶者が2/3、両親はそれぞれ1/6ずつということになります。
直系尊属には代襲相続という概念がありませんが、仮に両親ともに既に亡くなっており、代わりに祖父母が存命の場合には、祖父母が直系尊属として、相続人になります。
また、意外と忘れがちですが、直系尊属には、養父母も含まれます。直系ではないので、叔父や叔母、義理の両親は相続人ではありません。
配偶者と兄弟姉妹が相続人となる場合
配偶者と兄弟姉妹が相続人となる場合には、配偶者の相続分は3/4、兄弟姉妹の相続分は1/4となります。仮に兄弟姉妹が複数人いる場合には、兄弟姉妹全体の相続分である1/4を、兄弟姉妹の人数で割ることになります。
ちなみに、同一順位の相続人が複数いる場合には、それらの者の相続分は等しくなるのが原則ですが、「父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする」(民法第900条4号)とされています。
ですので、例えば、相続人として、配偶者と2人の兄弟がおり、そのうち1人がいわゆる異母兄弟であった場合、それぞれの相続分は、配偶者が3/4、父母の双方を同じくする兄弟姉妹が2/12、異母兄弟が1/12となります。
配偶者のみが相続人となる場合
配偶者のみが相続人となる場合には、配偶者の相続分は100%ということになります。相続人が配偶者1人である以上、他の相続人と分けるということがないからです。
ただし、配偶者のみが相続人というのは、第一から第三順位の相続人が、代襲相続人も含めて誰も存在しないという状況ですので、「単にうちは子がいないから配偶者の私が全て相続するはず」と安易に考えるのは危険ですので注意が必要です。
疎遠だった義理の兄弟姉妹の子が兄弟姉妹の代襲相続人となるケースなどが、よく見落とされがちですので特に注意が必要です。
おわりに
今回のコラムでは、「第121回相続コラム 相続の基本 相続分について解説」復習も兼ねて、配偶者の視点で、法定相続分はどうなるのか具体的に解説しましたが、いかがだったでしょうか。「相続人はそもぞも誰なのか」、「その相続分はどうなるのか」については、相続の問題を考える際の、基本となりますので、しっかりと理解したいところです。
とはいえ、相続というものは、何度も経験するものでもないため、馴染みが薄く、また、法律用語や制度は、複雑で難解なものも少なくないため、ご自身で制度を理解し、対応していくのは容易ではありません。
難解で複雑な法律的問題でお困り事やお悩みがある場合には、専門家に相談するのもひとつの解決の手段となります。
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