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相続コラム

第171回相続コラム 遺留分を認めない旨の遺言が見つかった場合、その遺言は有効なのか

遺言を作成する際に注意しなければならない事項のひとつに遺留分があります。遺留分を無視した遺言を作成してしまうと、残されたご家族のためにのこしたはずの遺言が、かえって遺留分を巡る争いを誘発する、争いの火種となってしまうおそれがあるからです。

では、遺留分を巡る相続人間の争いを防ぐべく、予め遺留分を認めない趣旨の遺言を作成した場合、その遺言は果たして有効なのでしょうか。今回のコラムでは、遺留分を認めない旨の遺言は有効なのか解説したいと思います。

 

遺言と遺留分

本来、自身の所有する財産については、自らの意思で自由に処分できるはずです。そして、遺言は、故人の最終意思として、自らの遺産を誰にどのように相続させるのか決めるものですので、遺言の内容も自由に決めることができるのが原則となります。そのため、遺留分を一切考慮しない遺言であっても、その遺言は有効となります。

例えば、自身の遺産を、特定の団体に全て遺贈する旨の遺言を作成したとしても、その遺言は相続人の遺留分を無視した遺言とはなっていますが、法律上、有効となります。

しかし、相続という制度には、残されたご家族、相続人の生活を保障するという側面があります。特に被相続人に生活を依存していた相続人からすると、当てにしていた遺産が1円も入ってこないとなると、生活が困窮してしまうおそれがあるからです。

そこで、法律では、遺留分という最低限の遺産の取り分を一定の相続人に認め、相続人の生活の保護を図っているのです。

すなわち、遺留分を侵害している遺言も有効ではありますが、遺留分を侵害された相続人は、遺留分侵害額請求という形で、遺留分を侵害している者から、遺留分を侵害している範囲で財産(お金)を取り返すことができるのです。

例えば、上記の例で言うと、故人が、自身の遺産を特定の団体に全て遺贈する旨の遺言を作成していた場合、その遺言自体は有効となります。ただし、相続人は、「遺産が全くもらえないのは困る」として、遺留分相当額の金銭を、その団体から返してもらうことができます。もちろん、遺留分侵害額請求権を行使するか否かは相続人の自由意思に委ねられていますので、特に生活に困っていない相続人が、故人の最終意思である遺言を尊重し、遺留分侵害額請求権を行使しないということも可能です。

 

遺留分を認めない旨の遺言

遺留分を無視した内容の遺言を作成した場合、後に遺留分侵害額請求権を行使されることによって、自身の希望通りに遺産が分配されないばかりか、相続人間で遺留分を巡る争いを誘発するおそれがあります。

では、遺留分を巡る争いを防ぐために、遺留分を認めない旨の遺言を作成した場合、その遺言はどうなるのでしょうか。

例えば、「全ての遺産は長男に相続させる。この遺言に関して遺留分は認めないものとする。」等の内容の遺言を作成した場合です。

結論から言いますと、遺言の内容として遺留分を認めない旨の記載があったとしても、その記載は無効となります。

遺留分は、最初に解説したように、残された相続人の生活保護のために認められた最低限保障された取り分であるため、遺言によっても一方的に奪うことは認めるべきではないからです。

なお、遺言の内容として遺留分を認めない旨の記載があった場合、その遺留分を認めない旨の記載部分は無効となりますが、その他の遺言内容や遺言全体が無効になるわけではありません。

上の例で言うと、「全ての遺産は長男に相続させる。」という遺言内容については、有効となります。「遺留分は認めない」という記載部分のみが無効となりますので、他の相続人がいる場合に、自身の遺留分を主張して、長男から遺留分相当額を取り戻すことができます。

もちろん、この場合でも、遺留分を主張するかどうかは相続人の自由ですので、「遺留分は主張しないで欲しい」という故人の意思を汲み取り、遺留分を主張しないことも可能です。

 

おわりに

今回のコラムでは、遺留分を認めない旨の遺言は有効なのか解説しましたが、いかがだったでしょうか。遺留分を無視した内容の遺言を作成しても、後に遺留分侵害額請求権を行使されることによって、自身の希望通りに遺産が分配されないばかりか、相続人間で遺留分を巡る争いを誘発するおそれがあり、また、遺留分を認めない旨の遺言を作成したとしても、その記載部分は無効となってしまうため、遺言を作成する際には、遺留分に配慮した内容にすることが大切となります。

どうしても特定の相続人に遺産を多く残したいという場合には、生前贈与や生命保険等を活用した相続対策・遺留分対策が必要になりますので、その場合には、相続対策の専門家に相談することをおすすめします。

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