相続登記の義務化によって、不動産を相続等によって取得した場合には、相続登記を法務局に申請しなければならなくなりました。前回、前々回のコラムでは、法定相続分どおりに相続する場合や遺産分割協議によって相続する場合における相続登記の必要書類について解説してきました。今回のコラムでは、遺言書によって相続する場合における相続登記の必要書類について解説したいと思います。
相続登記の必要書類
遺言書によって相続する場合における相続登記の必要書類は、一般的に、下記のようになります。
■登記申請書
■遺言書
■被相続人の死亡時の戸籍謄本
■被相続人の住民票の除票(または戸籍の除附票)
■不動産を相続する相続人の戸籍謄本
■不動産を相続する相続人の住民票
■相続する不動産の固定資産評価証明書等
■相続する不動産の登記事項証明書(または登記簿謄本)※提出不要
■相続関係説明図 ※提出は任意
以下、各書類について詳しく解説していきます。
登記申請書
登記申請書とは、文字通り、登記を申請する際に、法務局に提出しなければならない申請書になります。
登記申請書は法務局の窓口やホームページから入手することができます。
法務局ホームページ
https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/minji79.html
※上記サイトの「所有権移転登記申請書(相続・公正証書遺言)」または「所有権移転登記申請書(相続・自筆証書遺言)」が相続登記の申請書になります。
遺言書
遺言書によって不動産を相続した場合には、その証明として遺言書の提出が必要となります。
また、検認が必要な遺言書を提出する場合には、家庭裁判所で検認という手続きを行い、検認調書または検認済証明書も併せて提出する必要があります。
提出する遺言書が、法務局の遺言書保管制度を利用している自筆証書遺言や公正証書遺言の場合には、検認は不要となります。
なお、検認を怠ると罰則の適用がありますので、注意が必要です。
被相続人の死亡時の戸籍謄本
被相続人について相続が発生し、遺言書で指定された者が相続人であることを証明するため、被相続人の死亡時の戸籍謄本の提出が必要となります。
前回、前々回のコラムで解説した、法定相続分どおりに相続する場合や遺産分割協議によって相続する場合とは異なり、通常は、被相続人の戸籍を出生まで遡って取得する必要はありません。
遺言書によって不動産を相続する相続人が指定されている場合には、その指定された相続人が不動産を相続するため、他の相続人を漏れなく特定する必要はないからです。
ただし、被相続人の直系尊属や兄弟姉妹が相続する場合には注意が必要です。
被相続人の子が遺言によって相続する場合、通常、被相続人の死亡時の戸籍謄本と不動産を相続する相続人本人の戸籍謄本があれば、遺言で指定された者が相続人であることを証明可能です。しかし、被相続人の直系尊属が遺言によって相続する場合には、前提として子がいないことを証明する必要があるため、被相続人の戸籍を出生まで遡って取る必要がありますし、被相続人の兄弟姉妹が遺言によって相続する場合には、被相続人と直系尊属の戸籍を出生まで遡って取る必要があります。
被相続人の住民票の除票(または戸籍の除附票)
現在の登記簿上の名義人が、亡くなった被相続人と同一人物であることを証明するための書類として被相続人の住民票の除票(または戸籍の除附票)が必要となります。
実は、法務局は、登記名義人の『氏名』と『住所』を元に登記名義人の同一性を判断しているので、住所の記載のない戸籍謄本だけでは、登記名義人と亡くなった被相続人が同一人物なのかどうかを判断できないからです。
なお、被相続人が亡くなった際の住所と登記簿上に記録されている住所が異なる場合には、以前の住所地で記録されている「住民票の除票」または「戸籍の除附票」によって住所が移転したことを証明する必要があります。
不動産を相続する相続人の戸籍謄本
当たり前のことですが、相続人となるためには、相続が発生した時点において、その相続人が生存している必要があります。仮に、相続発生時に、相続人が既に亡くなっているという場合には、その相続人に不動産を相続させることは不可能となりますので、遺言書の記載内容は、その限りにおいて、効力がなくなります。
相続発生時において、相続人が生存していることを証明するために、不動産を相続する相続人の戸籍謄本が必要となります。
不動産を相続する相続人の住民票
相続登記によって、新たに不動産を相続する相続人が不動産の名義人となりますので、その名義人の住所地を確認する必要があります。ですので、遺言書によって不動産を相続することになった相続人の住民票の提出が必要となります。
相続する不動産の固定資産評価証明書等
相続登記を申請する際には、登録免許税という税金を国に納める必要がありますが、その登録免許税の額は、相続登記を申請する不動産の固定資産評価額を元に計算されますので、その算出の根拠となる書類を提出する必要があります。
登録免許税を算出する根拠となる書類が固定資産評価証明書や固定資産税課税明細書等になります。
なお、不動産の評価額は毎年変動するため、最新年度の証明書を提出します。
相続する不動産の登記事項証明書
相続登記の申請書を作成する際には、申請の対象となる不動産の正確な情報(地番、地目、家屋番号等)を記入する必要があるため、それらの情報を確認のために登記事項証明書が必要となります。
あくまで、正確な情報を記入するために用いるだけですので、登記事項証明書を申請の際に提出する必要はありません。
相続関係説明図
相続関係説明図とは、故人(被相続人)と相続人との続柄をツリー状にまとめた説明図のことをいいます。イメージとしては、被相続人と相続人の関係を分りやすく説明した『家系図』のようなものです。
相続関係説明図については、登記の申請の際に必ず提出しなければならない書類というわけではありませんが、提出しておくと、後に、申請時に提出した戸籍謄本等の原本を返却してもらうことができます。
相続の手続きを進める際には、様々な場面で戸籍謄本等が要求されるため、その都度、全ての戸籍謄本等を取り寄せるのは非常に手間がかかります。ですので、複数の相続手続きを進める際には、相続関係説明図の提出を行い、謄本等の返却を受けると再度取り直す手間を省くことができます。また、銀行等の金融機関で相続手続きを行う際に、相続関係図の提出を求められることがありますので、一度作成しておくと、他の手続きもスムーズに行うことが可能となります。
おわりに
今回のコラムでは、遺言書によって相続する場合における相続登記の必要書類について解説しましたが、いかがだったでしょうか。
相続登記は、『相続』によって、不動産の所有権が相続人に移転した場合の名義変更手続きではありますが、『相続』と一口にいっても、様々な相続パターンがあります。代表的な相続のパターンとして、「遺言書によって相続するパターン」、「遺産分割協議によって相続するパターン」、「法定相続分通りにそのまま相続するパターン」の3つのパターンがあります。
第153回コラムから今回のコラムまでで、上記の代表的なパターンについて解説しておりますので、相続登記をご自身で申請されたい場合には、参考にしてください。相続登記の申請や、前提となる遺産分割等でお悩み・お困りの方は、相続に強い専門家に相談することをおすすめします。
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