近年、終活ブームなどの影響もあり、相続対策として生前贈与を活用されている方も少なくありません。生前贈与によって、多くの財産が譲り渡された結果、相続人の取り分が大幅に減ってしまった場合、遺留分侵害額請求によって財産を取り戻せる場合があります。今回のコラムでは、生前贈与された財産を取り戻す遺留分侵害額請求について解説したいと思います。
遺留分と遺留分侵害額請求
遺留分とは、相続人に保障された最低限の遺産の取り分のことを言います。
相続という制度には、残された家族=法定相続人の生活の保護という側面があります。各個人の財産は、生前贈与や遺言によって自由に処分できるのが建前ですが、無制限に遺産を処分できるとすると、場合によっては残された家族が困窮してしまうため、それを防止するために、遺留分という最低限の遺産の取り分を法律で保障しているのです。
その遺留分が、生前贈与や遺贈によって侵害されている場合、すなわち、最低限の取り分である遺留分が貰えなくなってしまった場合には、遺留分に相当する金銭を、遺留分を侵害している者に(生前贈与や遺贈によって財産を取得した者に)請求することができます。これを遺留分侵害額請求といいます。
遺留分の算定や遺留分権者について詳しくは
「第18回相続コラム 遺言によって遺産が1円も貰えない!?そんな時の救済手段、遺留分侵害額請求とは」をご覧ください。
遺留分侵害額請求は相続人以外への生前贈与にも適用可能
前掲のコラムでは、遺言によって遺留分を侵害された場合を念頭に解説していますが、生前贈与によって遺留分を侵害された場合でも、遺留分侵害額請求によって財産を取り戻すことが可能です。
正確には、贈与された財産そのものを取り戻せるわけではなく、あくまで侵害された遺留分に相当する額の金銭を請求し、お金のカタチで取り戻すことにはなります。
遺留分算定の基礎にできる生前贈与には期限がある
遺留分算定の基礎とできる相続人以外への生前贈与は、原則として、相続開始前の一年間になされた贈与に限られます。過去になされた生前贈与について、際限なく遡って取り戻せるとなると、贈与を受けた者の立場が著しく不安定となってしまうからです。
ただし、贈与の当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしていた場合には、1年以上前の贈与についても、取り戻すことが可能です。
また、生前贈与を受けた相手が相続人であり、その贈与が特別受益にあたる場合には、10年前までの贈与を、遺留分算定の基礎とし、取り返すことも可能です。
なお、相続人への生前贈与は、原則10年間となります。
おわりに
今回のコラムでは、生前贈与された財産を取り戻す遺留分侵害額請求について解説しましたが、いかがだったでしょうか。遺留分や遺留分侵害額請求は、専門的なお話しで難しい面も多いですが、生前贈与によって遺産の取り分が少なくなってしまったような場合にも、遺産を取り戻せる可能性があることを是非知っておいてください。
遺留分を具体的に計算するには、算定基礎を正確に把握し、財産を適切に評価する必要があるため、専門の弁護士に相談されることをおすすめします。
当事務所では、相続問題に強い弁護士が、適切な遺留分を計算し、問題解決にあたります。遺留分や遺留分侵害額請求について気になることやお困りのことがありましたら、当事務所にお気軽にご相談ください。初回相談無料で、時間制限を設けずに、皆様に納得のいくまで丁寧にご説明いたします。