少子高齢化に伴い、「お孫さんに遺産をのこしたい」と思う方が増えているというデータがあります。少子化により、孫の数が減り、一人ひとりのお孫さんとの関係がより緊密になり、また、高齢化=長生きによって、より長い時間、お孫さんと過ごすようになったことが、その要因とも言われています。今回のコラムでは、孫に相続権はあるのか、孫に遺産を相続させる方法について解説したいと思います。
そもそも孫に相続権はあるのか
結論から言いますと、孫には、原則として、相続権はありません。
誰が相続人になるのかについては、法律で定められており、法律で定められた相続人のことを法定相続人といいます。
法定相続人として、孫は定められておりませんので、何らかの対策を講じなければ、孫には相続権はありません。
ただし、例外として、代襲相続が発生しているケースでは、孫に相続権が発生します。
代襲相続とは、簡単に言うと、本来相続人となる者に代わって、その者の子が相続するという制度です。
例えば、祖父の財産を父が相続するはずであったが、祖父が亡くなる前に父が亡くなってしまったため、代わりに孫が相続するというのが代襲相続になります。
代襲相続について詳しくは
「第36回相続コラム 孫や甥・姪が相続人になる代襲相続とは」をご覧ください。
孫に遺産を相続させる方法
孫は、そのままでは相続人ではないので、代襲相続を除き、孫に遺産を相続させるには、特別な対策が必要となります。
遺言書を作成
孫に遺産をのこす方法として、遺言書を作成するという方法があります。遺言書を作成することによって、相続人以外の者にも、自由に遺産を譲り渡すことができるため、当然、孫に遺産をのこすことも可能となります。遺言書の作成は、相続対策の基本ともいえるため、非常に簡便ながら、有効な手段となります。
ただし、遺言書によって孫に遺産をのこす際には、遺留分には注意が必要です。相続人には、遺留分という法律上最低限保障された『取り分』が存在するため、その『取り分』を侵害するような内容の遺言を作成すると、孫と遺留分を侵害された他の相続人間で争いになるおそれがありますので、遺産の大部分を孫に譲り渡すような内容の遺言は避け、遺留分に配慮することが重要となります。
遺留分について詳しくは
「第18回相続コラム 遺言によって遺産が1円も貰えない!?そんな時の救済手段、遺留分侵害額請求とは」をご覧ください。
養子縁組を活用する
孫と養子縁組を行うことによって、孫に遺産を相続させることが可能となります。
孫と養子縁組を行うと、孫は養子となります。養子も実子も、「子」であることには変わりないので、相続の場面でも、法定相続人として扱われるため、相続権を有することになります。
養子縁組を活用した相続対策について詳しくは
「第106回相続コラム 養子縁組が相続対策に利用される理由」をご覧ください。
注意点として、相続税対策を考えている場合には、孫を養子とした際に、相続税が高くなるケースがありますので、相続税法上の取り扱いには気をつける必要があります。
孫養子の相続税法上の注意点については
「第107回相続コラム 相続税額の2割加算について解説」をご覧ください。
孫を保険金受取人とした生命保険に加入
厳密には、遺産の相続ではありませんが、「自身を被保険者かつ保険料の負担者」とし、「保険金受取人を孫」とした生命保険を契約することによって、遺産をのこすのと同様の効果を発生させることが可能となります。
ただし、孫を保険金の受取人とした場合、代襲相続が発生しているケースを除き、孫は「相続人」そのものではないため、死亡保険金の非課税枠を利用することができず、相続税負担が増加するおそれがあるので注意が必要です。
おわりに
今回のコラムでは、孫に相続権はあるのか、孫に遺産を相続させる方法について解説しましたがいかがだったでしょうか。代表的な方法を解説しましたが、他にも生前贈与等を活用する方法もありますし、節税を意識されるのであれば、その際に、『教育資金の一括贈与の特例』や『結婚・子育て資金の一括贈与の特例』を利用すると、節税効果が大きくなります。
単に「遺産をのこす」だけではなく、後のトラブルを未然に防いだり、節税対策等の広い視点から、「安心して、効果的に遺産をのこす」ということを考える際には、相続に強い専門家に相談することをおすすめします。
当事務所は、相続に強い弁護士が無料相談を実施しております。相続対策、相続問題に関することでお悩みの方は、お気軽にご相談ください。相談無料では、時間制限を設けずに、皆様に納得のいくまで丁寧にご説明いたします。札幌圏だけではなく、広く北海道内の方のご相談も受けております。