前回のコラムでは、お孫さんに遺産をのこす方法について解説しました。“遺産”として財産を孫に譲る以外にも、相続対策として、生前贈与を行うという手法もよく利用されています。今回のコラムでは、お孫さんへ教育資金を生前贈与する際に押さえておきたいポイントや、相続対策として活用したい教育資金の一括贈与の特例について解説したいと思います。
相続対策として孫への教育資金の生前贈与
お孫さんへ教育資金の生前贈与を行う際に、気になるのが贈与税。相続税と比較して、一般的に、贈与税は高額になるため、生前贈与を行う際には、常に贈与税について意識する必要があります。
ところでですが、祖父母から孫へ教育資金を贈与すると、贈与税はそもそも必要となるのでしょうか。
通常、個人の間で金銭の授受や財産の譲り渡しがあると、一定の控除枠はあるものの、その金額に応じて贈与税が課せられるのが原則です。
しかし、親や祖父母は、その子・孫に対して法律上、扶養義務を負っています。そして、扶養義務の内容は多岐に渡りますが、その中には子・孫に必要な教育を受けさせる義務も含まれているところ、通常必要と認められる教育費を親や祖父母が負担したとしても、それは扶養義務の履行と考えれるため、贈与税は課せられないのです。
つまり、祖父母が、孫の学費や、教材費等を、必要なときに都度負担していたとしても、常識的な範囲内の支出であれば、贈与税は一切かからないということになります。
参考:国税庁タックスアンサー
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4405.htm
一括贈与は課税される
祖父母から孫への教育資金の贈与は、贈与税は課せられないのですが、「教育資金」の贈与と認められるためには、その贈与されたお金が、その都度直接、教育費に充てられなければならないというルールがあります。ポイントは「都度」という点です。今まさに教育費が必要だから、そのお金を用立てているというイメージです。
ですので、『まだ孫は小さいので、今は必要ではないけど、将来、大学進学時に必要となるだろうから、前もってお金を渡しておく』ということはできないということです。なぜなら、お金を受け取った段階では、それが教育費なのかどうかは判断できないからです。
この場合、贈与されたお金が教育資金とは言えない以上、通常の贈与とみなされ、贈与税が課せられることになります。
教育資金の一括贈与の特例
お孫さんの教育費を、必要な時に、都度、負担する分には、贈与税は課せられませんが、一括で前もって教育費を渡すと、その時点では、実際に教育費に充当されていないため、通常の贈与として贈与税が課せられることになります。
ただし、教育資金を前もって一括贈与する際に、『教育資金の一括贈与の特例』という特別な制度を利用すると、最大1,500万円までを非課税で贈与することが可能です。この制度を利用するためには、いくつかの条件を満たす必要がありますが、その条件を満たすと、大きく節税が可能となるため、教育資金を一括贈与したいという場合には、検討する価値があります。
参考:国税庁HP
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sozoku-zoyo/201304/01.htm
おわりに
今回のコラムでは、お孫さんへ教育資金を生前贈与する際に押さえておきたいポイントや、相続対策として活用したい教育資金の一括贈与の特例について解説しましたが、いかがだったでしょうか。教育資金の一括贈与の特例を利用する際の詳しい条件等は、また別のコラムで解説したいと思います。
相続対策には、生前贈与以外にも様々な種類のものがありますし、生前贈与ひとつをとっても、贈与する手法が多数存在します。相続対策や節税対策についてお悩みの際には、専門家に相談することをおすすめします。
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