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相続コラム

第13回相続コラム 弁護士が解説する意外と知らない限定承認の活用法

相続が発生すると、土地や建物、現金などのプラスの財産だけではなく、借金やローンなどのマイナスの財産も引き継ぐことになります。本来、相続には、残された家族の生活を保護という側面があるはずなのに、マイナスの財産が多いと、かえって残された家族が困窮することにもなりかねません。そこで、法律では、どのように財産を相続するのかについて3つの方法を用意し、相続人に相続財産をどのように受け継ぐのか、または受け継がないのかを選択できるようにしています。

具体的には、“単純承認”、“限定承認”、“相続放棄”の3つになります。

今回のコラムでは、相続の3つの方式と一番複雑な限定承認について詳しく解説したいと思います。

 

相続の3つの方式

単純承認は、最もポピュラーな相続方式で、プラスの財産もマイナスの財産も、全て引き継ぐというものです。単純承認をするための手続きは不要で、相続放棄や限定承認の手続きをとらないと、自動的に単純承認となります。

それに対して相続放棄は、プラスの財産もマイナスの財産も、全て引き継がないことにする方式です。相続放棄をすると、放棄をした相続人は、その相続に関して初めから相続人ではなかったことになります。

「初めから相続人にならなかった」ということは、少し難しい話になりますが、代襲相続が発生しないことを意味します。たとえば、祖父が亡くなった場合に、その相続人である父が相続放棄した場合には、父が初めから相続人でない以上、孫が祖父の財産を相続(代襲相続)するということはありません。

他方、第1順位の法定相続人全員が相続放棄をすると、次順位の法定相続人に相続権が移ります。
たとえば、父親を被相続人として、第1順位の法定相続人が配偶者、子の場合、全員相続放棄をすると、父親の両親に相続権が移り、両親が相続放棄すると、父親の兄弟姉妹に相続権が移ります。

この点で、他の親族に迷惑をかけられないとして、相続放棄を躊躇してしまう相談が多くあります。

なお、相続放棄をするには、家庭裁判所にてその手続きをする必要があります。その相続放棄の手続きは、相続が発生したことを知ってから3ヶ月以内に手続きをする必要があります。また、他の相続人と共同する必要もなく、単独で放棄可能です。

 

限定承認について

単純承認や相続放棄に比べて、複雑で難解なのが限定承認。

限定承認は、「相続によって得たプラスの財産の限度において、負債などのマイナスの財産を相続する方式」をいいます。仮に借金などの負債が、相続するプラスの財産よりも多い場合には、承継する相続財産の範囲で借金などの支払をするという限度付きの相続といえます。

例えば、現金・預金・不動産が5000万円あり、借金が4000万円あるとすると、両方すべて相続されます。現金・預金・不動産が5000万円あり、借金が6000万円あるとすると、借金の方は、5000万円の範囲で弁済すればよいことになります。

 

どのようなときに限定承認が適しているのか

相続の際に、プラスの財産・マイナスの財産の全容を正確に把握できていない場合も少なくありません。そのような場合に、そのまま単純承認や相続放棄をしてしまうと、予想外の負債を負担したり、本来得られたはずの財産を得られなかったりする可能性があります。限定承認を選択すると、プラスの財産の範囲でしか借金を負わないので、自分の財産からの支払はしなくて済むので安心できます。

また、どうしても手放したくない財産がある場合、例えば家業で使われている建物を残したいというような場合には、相続を放棄することはできず、また、多額の借金がある場合には、単純承認することも高リスクとなります。そのような場合には、限定承認を行い、プラスの財産の範囲で借金を返済し、先買権という特別な権利を行使することで、必要な財産を手放さずに残すことも可能になります。

さらに、限定承認は、相続人全員の同意を得て申立てをする必要があり、相続放棄とは異なり、限定承認をしたとしても、次順位の相続人に相続権が移転することはありません。

そこで、他の親族に迷惑をかけたくないという場合にも限定承認をすることによって、多額の負債をプラスの財産の範囲内で承継し、それ以上は承継しないことによって、相続放棄に近い効果を得ることも可能です。

 

弁護士目線の限定承認を選択する際のポイント

限定承認を行うためには、相続放棄と同様に、家庭裁判所で特別な手続きが必要になり、期間制限があります。また、限定承認の手続きは相続放棄と比べ、申立、官報公告、財産目録の作成、債権者への通知、債権者への分配と、複雑な手続きや知識が必要であり、個人で進めるのは困難になります。ただ、負債があるけど、または負債の総額が不明だけど、引き継ぎたい財産がある場合の手段として限定承認はとても有効ですし、相続放棄による次順位相続人への承継をさせたくない場合にも有効なので、会社の株式、家業用の財産、思い入れの強い財産等が存在する場合には、弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。

また限定承認では税法上「みなし譲渡所得課税」という特殊な課税方法が取られるため、税金の計算にも注意が必要です。

当法律事務所は、相続に強い弁護士が在籍し、提携している税理士とのワンストップサービスを提供しております。相続放棄と限定承認、どちらを選択するか迷った場合や、特に引き継ぎたい財産がある場合には、お気軽にご相談ください。

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