「第6回相続コラム どうしたらいいの?相続した不要な不動産」にて「国や市が不要な土地や空き家を引き取ってくれるような制度は、今のところ存在しません」というお話をしましたが、令和3年4月21日の国会で成立した相続登記義務化に関する法改正の中で、新たに「 相続土地国庫帰属制度」という制度が設けられ、相続した不要な土地を国に帰属させることができるようになります。今回のコラムでは、 新しい相続土地国庫帰属制度について解説したいと思います。
相続土地国庫帰属制度とは
相続土地国庫帰属制度とは、所有者不明土地の発生の抑制を図るため、相続又は遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)により土地の所有権又は共有持分を取得した者等がその土地の所有権を、一定の要件のもとで国庫に帰属させることができるようにするという制度です。
所有者不明の土地が発生するのは、誰が土地の権利者か登記せずに放置(土地の名義を変更せずに放置)していることが大きな原因なのですが、なぜ、そもそも名義を放置するのでしょうか。
その理由として、例えば田舎の山林など、不要な土地については、直ちに名義変更する必要性が乏しく、また処分しようにもなかなか売れないなどの理由が挙げられます。取得した不動産を処分する場合には、当然、前提として名義を変更する必要がありますが、特に処分する予定がなく、また、処分しようにも売れない土地ならば名義を変更する理由がないというわけです。
そこで、不要な土地を名義変更せずに放置するくらいなら、一定の要件のもとで国庫に帰属させることができるようにしたのが相続土地国庫帰属制度です。土地を所有していると、それだけで固定資産税が課税される等の経済的な負担があるところ、不要な土地を手放すことは所有者としてもメリットがあります。
不要な土地を国庫に帰属させるには
法務大臣の承認
相続土地国庫帰属制度は、全ての土地について可能なわけではなく、法務大臣の承認が必要となり、下記のような土地については承認されません。
1.建物の存する土地
2.担保権又は使用及び収益を目的とする権利が設定されている土地
3.通路その他の他人による使用が予定される土地として政令で定めるものが含まれる土地
4.土壌汚染対策法第2条第1項に規定する特定有害物質(法務省令で定める基準を超えるものに限ります。)により汚染されている土地
5.境界が明らかでない土地その他の所有権の存否、帰属又は範囲について争いがある土地
負担金の納付
上記の承認を法務局に申請し、承認がおりた場合には、その土地の管理に必要な費用を納付する必要があります。その額は、承認があった土地の管理に要する10年分の標準的な費用の額を考慮して政令で定めれられるところにより算定した額とされます。具体的な額は、政令が定められてみないと不明ですが、土地を手放すのにお金がかかるという点には注意が必要です。
施行時期
改正法自体は国会で成立していますが、施行はまだされていません。公布の日から起算して2年を超えない範囲内において政令で定める日から施行とされています。