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相続コラム

第146回相続コラム よく似ているけど全く異なる相続分の放棄と相続放棄

『相続分の放棄』と『相続放棄』。字面はよく似ているのですが、必要な手続きや効果が全く異なります。今回のコラムでは、相続分の放棄について、相続放棄との違いも含めて解説したいと思います。

 

相続分の放棄とは

相続分の放棄とは、自身の法定相続分を放棄する意思表示のことをいいます。相続分を放棄すると、他の共同相続人との関係で、遺産を受け継ぐ権利を失います。

相続分の放棄は、『相続分の譲渡』と似た効果を発生させますが、相続分の譲渡は、自身の相続分を特定の者に譲り渡すのに対して、相続分の放棄をすると、放棄した者が有していた遺産の取り分は、他の共同相続人が、その相続分の割合に応じて取得することになります。

例えば、ある人が亡くなり、その相続人として、妻と長男と長女がいたとします。それぞれの法定相続分は、妻1/2、長男1/4、長女1/4となります。

仮に、長男が相続分を放棄すると、長男の相続分1/4を、妻と長女が、その相続分の割合(2:1)に応じて取得します。(※妻の法定相続分は2/4、長女の法定相続分は1/4なので、両者の相続分の割合は2:1。)

そうすると、結果として、妻は1/2+2/12=2/3の遺産を取得し、長女は1/4+1/12=1/3の遺産を取得することになります。(※長男の相続分1/4を2:1の割合で分けると、妻は1/4×2/3=2/12、長女は1/4×1/3=1/12を取得)

ちなみに、長男が相続分の放棄ではなく、相続放棄をすると、長男ははじめから相続人ではなかったことになるので、相続人は、妻と長女のみとなります。そしてそれぞれの法定相続分は、妻も長女も1/2ずつとなります。

 

相続分の放棄の手続と期限

相続分の放棄には、特に様式の定めはありません。遺産分割協議や調停の場において、相続分を放棄する旨の意思表示を行い、他の相続人の合意を得られれば、それだけで成立します。また、相続分の放棄には、期限も特に定められていません。

それに対して、相続放棄は、家庭裁判所での手続きが必要となりますし、相続が発生し、自分が相続人だと知ったときから3ヶ月以内に行う必要があります。

 

後順位の相続人への影響

相続放棄をすると、その効果として、放棄をした者は、当初から相続人ではなかったことになりますが、相続分を放棄したとしても、その者が相続人でなくなるわけではありません。

つまり、相続放棄の場合には、相続人ではなかったという効果が発生するため、その結果、相続人の順位に変動を及ぼすことがありますが、相続分の放棄では、そのような効果は発生しません。

 

借金がある場合には相続放棄を選択

相続放棄をすると、プラスの財産だけではなく、借金や負債などのマイナスの財産も相続することはなくなりますが、相続分の放棄をしたとしても、借金や負債から免れることはできません。相続分の放棄は、単に、相続人間の合意にすぎないからです。

ですので、「お金の分け方で揉めたくない」という理由で相続分の放棄をすることに問題はありませんが、「借金を相続したくない」という場合には、相続分の放棄ではなく、相続放棄をする必要がありますので注意が必要です。

 

遺産分割協議との関係

相続放棄をすると、はじめから相続人ではなかったことになるので、遺産分割協議に参加する必要はありませんし、その資格がそもそもありません。

それに対して、相続分の放棄の場合には、相続人でなくなるわけではないので、遺産分割協議に参加する必要があります。

もっとも、相続分を放棄しようとする人は、「面倒な遺産分割協議等に関わり合いたくない」と思っているのが通常です。

ですので、例えば、遺産分割調停の場合、裁判所に相続分放棄証書と印鑑証明書を提出する等により、調停当事者から離脱することが可能です。また、遺産分割協議段階の場合には、他の相続人から遺産分割協議に参加するよう申入れがあった場合に、その相続人に対し、相続分の放棄をする旨と、相続分放棄証書及び印鑑証明書を交付する等により、遺産分割協議の当事者から離脱することも可能です。

相続争い等に一切関わりたくないという場合には、相続分の放棄ではなく、相続放棄をしてしまうというのも、ひとつの手段となります。

 

おわりに

今回のコラムでは、相続分の放棄について、相続放棄との違いも含めて解説しましたが、いかがだったでしょうか。相続分の譲渡は、相続放棄と異なり、厳格な手続きもなく、また、期限がないため、利用しやすい反面、その効果は限定的となります。特に、借金等を相続したくない場合には、相続分の放棄ではなく、相続放棄を選択することが重要となります。

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