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相続コラム

第174回相続コラム いまさら聞けない法定相続分と遺留分の違い

過去数回にわたり、遺留分に関係するコラムを掲載してきましたが、遺留分という言葉自体、普段聞き慣れない難しい用語ですし、相続の相談に来られる方の中にも、「相続分と遺留分の違いがよくわからない」という方も少なくありません。今回のコラムでは、混同されがちな法定相続分と遺留分の違いを解説したいと思います。

 

法定相続分とは

法定相続分とは、読んで字の如く、法律で定められた遺産の取り分(相続分)のことを言います。通常、単に『相続分』という場合、この法定相続分を指すのが一般的です。

人が亡くなった場合、その故人の遺産は相続人が相続することになります。

しかし、相続人は常に1人とは限らないため、相続人間で遺産を分配するための何らかのルールがないと、相続人間で遺産の奪い合いになってしまうおそれがあります。

そこで、法律では、どの相続人がどれだけ遺産を相続するのか、遺産の取り分についてのルールを設けており、それが法定相続分というわけです。

具体的には、相続が発生すると、故人の遺産は、遺言がない限り、相続人間で法定相続分に従った割合で共有状態となります。

なお、全ての遺産が共有状態のままでは、処分したい遺産を処分するのにも他の共有者の同意が必要となる等、その活用が難しくなってしまうため、遺産分割協議を行うことによって、誰がどの遺産をどのように相続するのか具体的に決めるが通常です。遺産分割協議が有効に成立するためには、相続人全員の合意が必要であり、全員が合意するのであれば、法定相続分と異なる割合で遺産を分割することも認められており、その意味では、法定相続分は、遺産分割するためのひとつの“目安”とも言えます。

 

遺留分とは

遺産は相続人が相続するとは言いましたが、相続人が常に相続分通りに遺産を相続できるとは限りません。例えば、故人が遺言をのこしており、その遺言が全ての遺産を特定の第三者に遺贈する内容であった場合、相続人は一切遺産を相続できないことになってしまいます。

しかし、例えば、故人の配偶者や、故人に未成年の子がいた場合など、生活を故人に依存していた者がいる場合に、遺産を一切相続できないとなると、当てにしていた当面の生活資金がなくなり、生活に困窮してしまうおそれがあります。

そこで、法律では、一定の相続人に遺留分という最低限の遺産の取り分を保障し、相続人が生活に困窮してしまうことを防いでいるのです。

上記の例のように、全財産の遺贈を受けた第三者がいる場合には、相続人は遺留分を主張することによって、遺贈を受けた第三者から遺留分相当額を取り戻すことが可能となります。

 

法定相続分と遺留分の違い

 

機能する場面が異なる

法定相続分は、遺言がない場合に、各相続人の相続割合を定め、また、遺産分割協議の場面では、遺産を分配する目安として機能します。それに対して、遺留分は、遺言によって不公平は遺産の分配や遺贈がなされた場合に機能する最低限の取り分となります。

 

全ての相続人が遺留分権利者になるわけではない

法定相続分が認められる法定相続人になれる人は、配偶者、子や孫などの直系卑属、親や祖父母などの直系尊属、兄弟姉妹や甥・姪となります。

それに対して、遺留分が認められるのは、配偶者、直系卑属、直系尊属に限られ、兄弟姉妹や甥・姪が法定相続人となる場合、その兄弟姉妹や甥・姪には遺留分は認められません。

遺留分は、相続人の生活を保障するための権利であり、重要な権利ではありますが、遺留分を認めるということは、その範囲で故人の意思を制限するという側面がありますので、遺留分を主張できる相続人は限定されているのです。

 

計算の際に対象となる財産

故人が所有していた全ての財産が相続の対象となりますので、法定相続分を計算する際にその対象となる財産は、故人が亡くなった時点で有していた財産の全てというのが原則となります。

これに対して、遺留分は、不公平な遺贈等があった場合に、遺産がもらえなくなったり、遺産の取り分が減ってしまった相続人を救済する制度であるため、故人が亡くなった時点で有していた財産以外にも下記のものが遺留分を計算する際の対象となります。

■被相続人の死亡前1年以内に贈与された財産
■当事者が遺留分を侵害すると知りながら生前贈与した財産
■相続人へ死亡前10年以内に贈与された財産

遺留分の具体的な計算方法は「第18回相続コラム 遺言によって遺産が1円も貰えない!?そんな時の救済手段、遺留分侵害額請求とは」をご覧下さい。

 

時効の有無

遺産分割協議自体には、時効という概念がありませんので、法的には遺産分割はいつ行っても良いということになります。(ただし、他の制度との関係から、事実上、一定期間内に遺産分割協議をしなければならないケースもあります。例えば、相続税申告の際に特例の適用を受けたり、相続登記を申請する前提として遺産分割を行う場合などです。)

それに対して、遺留分を取り戻す遺留分侵害額請求権には時効があり、「相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から一年」経つと、消滅時効により権利を主張することができなくなります。また、相続開始から10年経過した場合にも、時効によって権利が消滅します。

 

おわりに

今回のコラムでは、混同されがちな法定相続分と遺留分の違いを解説しましたが、いかがだったでしょうか。遺留分は一般の方には馴染みが薄く、難しい内容だったかもしれませんが、遺留分は、遺産の取り分が少なくなってしまった場合等に、遺産を取り戻すことができる重要な権利です。

不公平な遺言などによって、遺産を取得できなかったとしても、遺留分によって、遺産を取り返すことのできる場合があります。また、遺留分を計算する際、遺産に不動産や株式などが含まれる場合には、その評価方法によって額が変わってきたり、また生前の贈与などによって遺留分の算定基礎となる遺産が異なってくる場合があります。

当事務所では、相続問題に強い弁護士が、適切な遺留分を計算し、問題解決にあたります。遺留分について気になることやお困りのことがありましたら、当事務所にお気軽にご相談ください。初回相談無料で、時間制限を設けずに、皆様に納得のいくまで丁寧にご説明いたします。

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