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相続コラム

第50回相続コラム 路線価に基かない課税も適法 2022年4月19日最高裁判決の内容を解説

第45回相続コラム 路線価に基かない不動産相続税 注目の裁判」で取り上げた裁判について、今週4月19日に、最高裁で判決が下されました。最終的には、相続人側の訴えは退けられ、路線価に基かない課税も適法と判断されました。いわゆる「タワマン節税」等の行き過ぎた不動産購入による相続税対策に「待った」がかけられる結果になりました。今回のコラムでは、今回の判決の内容について、あらためて争点を整理し、解説したいと思います。

 

裁判の内容

今回の裁判は、不動産を相続した相続人側が、路線価に基いて相続財産の価額を評価し、その結果に基き相続税を申告したのに対して、税務署が、その申告額は「著しく不適切」として、独自に不動産価額を再鑑定し、その鑑定評価に基ついて追徴課税を行ったところ、相続人側がそれを不服として裁判になったという事案です。

 

法律的な争点

相続税法上、相続税を計算する際に、相続財産は時価で計算されるのですが、その時価がいくらなのかを具体的に評価する方法は、法律では定められていません。

具体的な評価方法は、国税庁の発する「財産評価基本通達」によって示され、土地の価額は、原則として、国税庁が毎年公表する「路線価」によるとされています。また、その通達では、例外も示されており、路線価で評価することが「著しく不適切」な場合には、独自に評価することができる旨が示されています。

 

「時価」=「路線価」ではない

ここで、法律と通達を合わせ読み、「時価」=「路線価」と考えると、路線価による評価を認めずに、独自に鑑定評価して追徴するというのは、違法と考える余地がありますが、通達はあくまで行政機関の内部的な取り扱いの話であり、法律的な効力は持たないため、必ずしも「時価」=「路線価」とはならず、時価は遺産取得時の「客観的な交換価値 」と裁判所は判断しています。つまり、相続財産を独自に鑑定評価し、その評価額がその財産の客観的な交換価値を超えていなければ、「路線価」以外の評価方法を用いて課税しても、問題ないということになります。

 

平等原則違反について

また、いわば狙い撃ち的に、特定の者にだけ例外的な基準を適用し賦課徴収するのは、不平等な取り扱いを禁止する「平等原則違反」が問題になりそうですが、例外的な扱いをする「合理的な理由」があれば、平等原則違反にはならないと裁判所は判断しました。そして、裁判所は、路線価をそのまま適用してしまうと「実質的な租税負担の公平に反してしまうという事情」があれば、異なる取り扱いをする合理的な理由があるとしています。

今回のケースでは、行き過ぎた相続税対策の結果、 通常の納税者=対策をしていない納税者と納税額に著しく不均衡が生じてしまうため、そのまま路線価で計算することが「実質的な租税負担の公平に反する」とされ、相続人側の主張は認められませんでした。

 

今回の裁判でのポイント

今回の裁判では、路線価以外の評価方法(財産評価基本通達6項)が、どのような場合に適用されるのか、その具体的な基準は、残念ながら示されませんでした。ただ、判決文から、裁判所が注目していたと思われるポイントを挙げていきたいと思います。

 

大前提として評価額に大きな乖離

今回のケースで争われた不動産の価額は、路線価で評価すると約3億3000万円、取得時の価額は約13億8700万円、不動産鑑定評価額は約12億7300万円と、大きな乖離があります。

裁判所は、大きな価額の乖離があるだけでは、例外適用する合理的な理由があるとは認めていませんが、それでも、路線価と不動産鑑定評価額との間に4倍近い開きがある点は見逃せません。

 

不動産購入から相続開始までの期間

今回のケースでは、不動産は複数購入されていたのですが、それぞれ相続開始の約3年半前と約2年半前となっています。不動産購入から相続開始までの期間が短いことが、税金対策目的の購入と判断されたひとつの要因となっています。

 

融資の目的

不動産購入の際に、融資を受けると、負債が増え、その分相続財産の総額をマイナス計上することができます。今回のケースでは、銀行から融資を受ける際に、稟議書に「相続対策」である旨の記載があり、これも税金対策目的と認められた大きな要因となっています。

 

実際の申告額は0円

路線価に基き不動産の価額を評価し、借入分や基礎控除分を差し引くと、今回のケースでは、相続税の申告額が0円でした。行き過ぎた相続税対策がなければ2億円以上の相続税がかかるところが0円となっているインパクトは相当大きいものと思われます。

 

相続税対策としての不動産の購入には注意

今回の判決では、路線価ではなく「財産評価基本通達6項」が適用される具体的な基準が示されませんでしたので、相続税対策として不動産を購入する際には、専門家に相談し、慎重に検討する必要があります。特に、路線価と実勢価額との開きが大きい、いわゆる「タワマン節税」などはリスクが大きいと言えます。

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