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相続コラム

第79回相続コラム 遺言ってなに?自筆証書遺言について基本から解説

遺言は、ご自身の最終意思を書きのこすものであり、その作成は、法律で定められた方式に従って行う必要があります。法律で定められた遺言の方式にはいくつか種類があるのですが、今回のコラムでは、代表的な遺言の方式である自筆証書遺言について基本から解説したいと思います。

 

そもそも遺言とは

遺言とは、ご自身が亡くなった後の財産の処分をどうするのか、誰が何を引き継ぐのか等の内容を法律で定められた方式に従い、最終意思として示すものです。

遺言を作成する上で大切なのは、「法律で定められた方式に従い作成する」ということです。仮に、その方式を無視して作成された書面は、法律上の「遺言」とは認められず、単なる「遺書」として法律上の効力が発生しません。

もちろん、法律上の効力が発生しなくても、相続人が亡くなられた方の意思を尊重し、その「遺書」として作成された書類等に従うのは自由ですが、これには強制力がありません。だれかが反対すると争いが生じる可能性があります。安心確実に遺言の効力を発生させるには、法律で定める形式をきちんと守ることが必要です。

 

遺言の方式

法律で定められた遺言の方式(普通方式)には、

■自筆証書遺言
■公正証書遺言
■秘密証書遺言

の3種類の方式がありますが、秘密証書遺言は、複雑で取り扱いが難しいことから、実際に、実務上よく用いられるのは、今回解説する自筆証書遺言または公正証書遺言になります。

 

自筆証書遺言とは

自筆証書遺言とは、読んで字のごとく、自筆で作成する遺言です。遺言作成に必要な、全文、日付、署名を全て自筆で記載し、押印します。

全て自書することが法律で要求されているため、例えば、「文章の内容をパソコンで作成し、書名だけ自筆」という遺言は、無効となります。日付も文章も全て自書する必要があるからです。

 

自筆証書遺言の有効要件

 

全文を自書する

「遺言書」というタイトル、本文など、全て遺言作成者が自書する必要があります。パソコンで作成したり、代筆をお願いするということは認められません。

例外として、財産目録や通帳の写しを添付する場合には、それらの目録等については自書しなくても構いません。ただし、その場合でも、添付した書面ひとつひとつに遺言者の署名押印が必要です。

 

作成日を自書する

遺言を作成した日付を自筆で書きます。日付(年月日)のないものは無効となります。よくあるケースとして、「○月吉日」など、不正確な日付を書くと無効になる危険性があります。

遺言が複数ある場合には、日付の先後で、どちらが有効か判断するため、正確な日付は重要となります。

 

署名して印鑑を押す

遺言には必ず署名と押印が必要です。印鑑は実印でなくても、いわゆる認印や銀行印でも、朱肉をつけて押す印鑑であれば問題ありません。

 

加除・訂正する場合も方式を守る

自筆証書遺言中の加除その他の修正についても、法律でその方式が定められており、その方式に従って修正する必要があります。具体的には、変更する場合には、遺言者が変更箇所を指摘し、これを変更した旨を付記・署名し、かつ、その変更箇所に訂正印を押すということになります。

修正箇所が多くなると、文書全体が判読しづらくなり、場合によっては遺言書全体が無効となりかねないため、修正が複雑になるくらいなら、新たに書き直すことをおすすめします。

 

自筆証書遺言のメリット・デメリット

 

自筆証書遺言のメリット

自筆証書遺言のメリットは、手軽で費用もかからないということです。

紙とペンとハンコがあれば、思いついた時や余暇に、いつでもどこでも作成できるという手軽さがあります。また、遺言の方式としてよく用いられる公正証書遺言は、公証役場で作成するため、公証人の手数料等の費用が必要となります。しかし、自筆証書遺言の作成については、必要な費用というものはありません。

 

自筆証書遺言のデメリット

 

不備があると無効になる危険性がある

どの方式の遺言でも、要件等に不備があると、無効となるのは共通ですが、公正証書遺言として作成する場合には、公証人という専門家に遺言を作成してもらうことになるため、法律的に問題がないか形式的なチェックが入ることになるので法的に無効になることは限りなく低くなります。それと比較すると、自筆証書遺言をご自身で作成された場合には、そのような専門家のチェックが入るとは限らないため、不備があった場合には、そのまま見過ごされ、無効となってしまうリスクがあります。

紛失したり書き換えられるリスクがある

こちらも公正証書遺言との比較にはなりますが、公正証書遺言を作成された場合には、原本は公証役場で保管されるため、紛失や書き換え等のリスクはありません。それに対して、自筆証書遺言の場合には、遺言書保管制度等を利用しない限り、紛失したり、内容を書き換えられるリスクがあり、また、エンディングノート等で遺言の存在を相続人に知らせていないと、遺言の存在自体が認識されないというケースもあります。

原則として検認が必要となる

自筆証書遺言が発見された場合には、遺言書保管制度を利用していない限り、検認という手続きが必要となります。この検認という手続きは、怠ると罰則があり、また、手続きに手間がかかります。遺言を最大限有効利用するためには、この検認という手続きは省略したいので、自筆証書遺言を作成された場合には、遺言書保管制度を利用することをオススメします。

検認について詳しくは
第19回相続コラム 自筆の遺言書が見つかったらどうすべきかを弁護士が解説」をご覧ください。

 

おわりに

今回のコラムでは、代表的な遺言の方式である自筆証書遺言について解説しましたが、いかがだったでしょうか。遺言は、相続対策の基本となりますので、相続対策を検討する場合には避けては通れない道となります。

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