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相続コラム

第85回相続コラム 遺言で子を認知する「遺言認知」とは何か その注意点も解説

婚姻関係にない女性との間にできた子(いわゆる婚外子)は、父子間に親子関係が存在しないものと法律上扱われますので、その子はそのままでは父親の財産を相続することはできません。親子関係を発生させ、相続権を発生させるためには認知という手続きが必要になります。今回のコラムでは、遺言によって認知を行う遺言認知について、その注意点も含めて解説したいと思います。

 

遺言認知とは

遺言認知とは、文字通り、遺言によって認知を行うことをいいます。

よく利用されるケースとして、「子を認知してあげたいが、認知をしてしまうとご自身の家族と揉め事が発生する危険性が高いため、せめて遺言で認知してあげたい」というようなケースです。

生前に行う通常の認知と遺言認知との法的な効力の違いは特にありません。遺言による認知であったとしても、父子関係が発生しますし、当然、認知を受けた子には相続権が発生します。

民法781条第2項
認知は、遺言によっても、することができる。

 

遺言認知の注意点

 

承諾が必要な場合は断わられる可能性がある

認知を受ける子が成年に達している場合には、その子本人の承諾がなければ認知は成立しません。ですので、遺言で認知をしたとしても、子が成人に達していると、認知を断られる可能性があるので注意が必要です。

また、遺言認知は、まだ生まれていない胎内の子を認知することもできますが、その場合には、母親の承諾が必要となります。

 

認知する子に相続させる財産を特定する

遺言で認知のみを行うと、認知を受けた子は法定相続人にはなりますが、具体的な財産を取得するためには、相続人間の遺産分割協議を経る必要があります。他の相続人からすると、突如として新たな相続人が現れて、自身の分け前が減る格好になりますので、遺産分割協議が難航し、争いに発展する危険性があります。遺産分割協議を省き、争いを未然に防ぐために、具体的に相続させる財産も特定しておくことが重要となります。

 

遺言で遺言執行者を指定しておく

遺言で認知を行う際には、必ず遺言執行者が必要となります(戸籍法第64条)。仮に、遺言執行者を指定していなかった場合には、家庭裁判所に遺言執行者の選任申し立てを行うことになり、非常に時間と手間がかかります。ですので、遺言認知を行う際には、遺言執行者もセットで指定しておくことが大切です。

 

遺言書が無効になると認知も無効

当然と言えば当然ですが、遺言による認知が有効となるためには、大前提として遺言書が有効でなければなりません。仮に、何らかの不備により、遺言書が無効となってしまうと、認知も無効となってしまいます。遺言認知という重要な身分行為を含む遺言を作成される際には、自筆証書遺言ではなく公正証書遺言で作成するなど、慎重さが要求されます。

 

おわりに

今回のコラムでは、遺言認知について解説しましたがいかがだったでしょうか。遺言認知については、遺産を誰にどう分配するのかという財産行為だけではなく、父子関係を発生させるという身分行為も関わってくるため、実際に、遺言を作成する際には、弁護士などの法律の専門家にまずは相談することを強くお勧めします。また、実際の遺言執行時には、遺言執行者が必要となるため、その点についても専門家に依頼するのが、安心・確実な遺言の執行につながります。

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