相続人の中には、相続資格が重複する二重相続資格者が存在する場合があります。代表的なケースとして、孫養子が代襲相続したというケースです。今回のコラムでは、孫養子が代襲相続した場合をモデルとして、二重相続資格者の相続について解説したいと思います。
二重相続資格者とは
二重相続資格者とは、文字通り、1人で2人分の相続資格が認められる者のことをいいます。下図の孫のAさんが該当します。
Aさんは、被相続人との養子縁組によって、被相続人の「子(養子)」という地位、相続資格を有します。前々回のコラムでも解説しましたが、養子であっても、血縁関係にある子と同様の地位を取得することになります。
参考:「第106回相続コラム 養子縁組が相続対策に利用される理由」
また、Aさんの父は、被相続人の長男なので、当然、相続資格を有していたのですが、被相続人が亡くなり相続が発生した段階では、既に他界しているため、代わりにAさんがその地位を代襲して相続します。その結果、Aさんは被相続人の「子(養子)」という相続資格と父から代襲した相続資格という2つの相続資格を有することになります。
孫養子の代襲相続と相続分
孫養子が代襲相続した場合、相続資格が二重に存在することになりますが、このようなケースでは、養子としての相続分と、代襲相続人としての相続分の両方を相続することになります。
上で挙げた例で見ると、相続人は、長男・次男・三男および養子のAさんの4人とカウントされ、それぞれ1/4ずつの相続分を取得することになります。そして、長男の相続分については、Aさんが代襲して相続することになるため、Aさんは、養子としての相続分1/4と代襲相続による相続分1/4を合わせて、トータル1/2の相続分を取得する計算になります。
孫養子の代襲相続と相続税
孫養子が代襲相続した場合、相続資格が二重に存在することになり、相続分は2つの資格に応じて取得することになります。つまり、相続分については、それぞれの資格毎に人数をカウントして、2人と考えることになります、
しかし、相続税を計算する際の基礎控除額については、人数を1人とカウントするので、注意が必要です。
相続税を計算する際には、基礎控除枠というものがあり、その計算式は「3,000万円+600万円×法定相続人の人数」で表されますが、相続資格が重複する者がいたとしても、あくまで1人としてカウントします。
ただし、前回のコラムで解説しましたが、孫養子が代襲相続した場合には、いわゆる「相続税額の2割加算」の対象にはなりません。
参考:「第107回相続コラム 相続税額の2割加算について解説」
おわりに
今回のコラムでは、孫養子が代襲相続した場合をモデルとして、二重相続資格者の相続について解説しましたが、いかがだったでしょうか。養子縁組を活用した相続対策は、ポピュラーな手法ではありますが、ケースによっては、法律関係が複雑になってくる場合があります。特に、民法上の扱いと相続税法上の扱いとが異なる場合がありますので、注意する必要があります。
相続対策を行う際には、相続に精通した弁護士や、相続税に詳しい税理士に相談することをおすすめします。
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