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相続コラム

第132回相続コラム 特別寄与料が認められる条件や注意点を解説

前回のコラムでは、特別寄与料に関する最新の裁判例をご紹介しました。今回のコラムでは、あらためて特別寄与料が認められるための条件や、注意点を解説したいと思います。

 

特別寄与料とは

特別寄与料とは、被相続人の介護などを無償ですることによって、遺産の維持・増加に貢献してきた相続人以外の親族が、相続人に対して寄与度に応じた金銭を請求できるようにした制度です。

被相続人の介護等を行うのは、常に相続人とは限らず、例えば『長男の妻』といった立場の方が行うことも多く見られました。そのような相続人以外の親族にも、その貢献に報いるために、その貢献度に応じた金銭を請求できるようにしたのが特別寄与料という制度です。

民法1050条第1項
被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族(相続人、相続の放棄をした者及び第八百九十一条の規定に該当し又は廃除によってその相続権を失った者を除く。以下この条において「特別寄与者」という。)は、相続の開始後、相続人に対し、特別寄与者の寄与に応じた額の金銭(以下この条において「特別寄与料」という。)の支払を請求することができる。

 

特別寄与料を請求できる人

特別寄与料を請求できるのは「相続人以外の親族」となります。そして、法律上、「親族」とは、6親等以内の血族、3親等内の姻族、配偶者を指します。

特別寄与料の例でよく挙げられる「長男の妻」は、被相続人から見て『1親等の直系姻族』になりますので、特別寄与料を請求可能な「相続人以外の親族」となります。また、他の典型的な特別寄与料の例ですと、子がいる被相続人の介護を、被相続人の兄弟姉妹が行っていたという場合、被相続人に子がいる場合には、被相続人の兄弟姉妹は相続人にはあたらず、また兄弟姉妹は2親等の傍系血族ということになりますので、こちらも特別寄与料を請求可能な「相続人以外の親族」にあたります。

内縁関係のパートナーは、法律上、配偶者とは認められていないため、相続人になれないのはもちろん、特別寄与料の請求も認められていないのが現状です。

ちなみに、被相続人の親族であっても、相続人にあたる場合には、そもそも特別寄与料を認めなくても、従来からある寄与分という制度によって、その貢献を相続分に反映させることが可能なので、相続人には特別寄与料の主張は認められません。同様に、相続放棄した元相続人や相続欠格・廃除された相続人も特別寄与料の主張は認められません。

 

特別寄与料を負担する人

特別寄与料は、相続人以外の親族から相続人に対して請求します。つまり、特別寄与料を負担するのは相続人となります。そして相続人が複数人いる場合には、各人が相続分に応じて負担することになります。

特別寄与料の負担について詳しい解説は、前回のコラム「第131回相続コラム 最新判例からみる遺留分侵害額請求権を行使した相続人と特別寄与料の負担」をご覧ください。

 

特別寄与料の要件

 

無償で被相続人の療養看護その他の労務の提供

特別寄与料の請求が認められるには、無償で被相続人の療養看護その他の労務の提供を行ったことが必要となります。例えば、被相続人の介護を行ったり、家業への従事がこれにあたります。

そして、それは「無償」でなければなりません。家業に従事はしていたが、給与をもらっていたというような場合には、既に対価を取得しているため、特別寄与料の請求は認められません。ただし、金銭等を受領していたとしても、労務提供の対価として著しく低い利益しか得ていなかったというような場合には、特別寄与料を請求できるケースも考えられます。

 

被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与

上記の、無償で被相続人の療養看護その他の労務の提供を行った結果、被相続人の財産の維持や増加に特別の寄与があったことも特別寄与料の請求が認められるための要件となります。

例えば、被相続人の介護を行ってきたという場合には、本来必要となる介護サービスに必要なお金の出費を抑えることができたことになるため、被相続人の財産の維持に貢献したと言えます。

単に、被相続人のお見舞いに通っていた、通院に付き添っていたというようなケースでは、被相続人の財産の維持に貢献したとは言えないため、特別寄与料の請求は認められません。

また、何が「特別の寄与」と言えるのかについては、特別寄与料を主張する者は、相続人のような扶養義務を負っていないのが通常であり、その貢献に報いるのが相当と認められる程度の寄与であれば足りると考えられています。

よく似た制度である寄与分と対比すると分りやすいのですが、寄与分を主張する際には、寄与分を主張するのは相続人であり、相続人と被相続人との間には密接な親族関係があるため、扶養義務を負っているのが通常です。ですので、通常のお世話をするのは、むしろ扶養義務から当然とも言えるので、そのような義務を超える顕著な貢献でないと、「特別の寄与」とは言えず、寄与分の主張はできません。

 

特別寄与料の請求手続き

特別寄与料は、まずは相続人と協議して、その額を定め、請求することになります。

特別寄与料の協議は、相続人と行うため、事実上、遺産分割協議に近いかたちにはなりますが、遺産分割協議そのものとは異なります。

つまり、特別寄与料について合意が成立し、その証拠を残すためには、遺産分割協議書とは別に、特別寄与料についての合意書面を作成する必要がありますので注意が必要です。

当事者間で、特別寄与料についてお互いに納得し、合意が得られるのが理想ですが、協議が調わない場合には、家庭裁判所に調停等を申し立てることになります。

 

特別寄与料の相場

特別寄与料を当事者間で協議して決める場合には、当事者が納得するのであれば、いくらに設定しても構いません。

ただ、通常は、介護報酬基準額等を参考に、日当額を決め、「日当額 × 療養看護日数 × 裁量割合(0.5~0.8程度)」というような計算式により算出される額を基準にするのが普通です。家庭裁判所で調停等になった場合には、上記のような計算式で特別寄与料が計算されるのが一般的だからです。

ここで、“裁量割合”というものを掛けて金額を調整するのは、介護報酬基準額は介護のプロ基準の額であり、しかも、全くの赤の他人を介護した際の金額なので、それをそのまま適用するのではなく、減額調整して算出するためのものです。

 

特別寄与料の請求期限

特別寄与料は、相続の開始及び相続人を知った時から6か月、または相続開始時から1年以内に請求する必要があります。かなり短い期間制限が設けられているので、特別寄与料の請求を検討している方は、早めに専門の弁護士に相談することをオススメします。

 

おわりに

今回のコラムでは、特別寄与料が認められるための条件や、注意点を解説しましたが、いかだったでしょうか。特別寄与料は比較的新しい制度ではありますが、社会の高齢化が進み、また、介護の人手不足と相まって、今後ますます活用されるケースが増加えてくることが予想されます。特別寄与料の請求期間は短いため、「被相続人に尽くしてきたのに遺産の恩恵が一切ない」という方は、お早めに相続専門の弁護士に相談することをオススメします。

当事務所では、相続に関する幅広い知見を持った弁護士が相続に関する相談を受け付けております。相談は初回無料となっておりますので、特別寄与料についての相談はもちろん、相続対策、遺言、遺産分割など、相続に関するお困り事は何でもお気軽にご相談ください。

 

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