2024年4月1日より、相続登記の申請が義務化されました。相続や遺言によって不動産を取得した場合には、不動産の名義変更と言える相続登記を申請することは義務であり、それを怠った場合には、10万円以下の過料という罰則の適用があります。今回のコラムでは、相続登記の義務化の罰則、過料とは何か、また、どのような場合に過料が科せられるのか解説したいと思います。
相続登記の罰則、過料って何?
過料とは、行政上の秩序を維持するために、行政法規上の義務違反に対して少額の金銭を徴収する罰則のことをいいます。
過料は行政罰であり、刑事事件における刑事罰とは異なりますので、過料に科せられたとしても、前科にはなりません。
刑事事件における犯罪として刑罰を科す程ではないが、行政上のルールを守ってもらうために、違反者に与えるペナルティが過料と考えると分りやすいかもしれません。
なお、罰金刑は刑事罰なので前科になりますし、過料とよく似た刑罰として、科料という刑罰がありますが、科料も過料もどちらも発音は“カリョウ”で同じなのですが、科料は刑事罰なので、科せられると前科になります。
申請期間を過ぎてもすぐに過料の制裁となるわけではない
相続等によって不動産を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請しなければなりませんが、3年という期間が経過したともしても、すぐに制裁が科せられるわけではありません。
法務局の登記官が、義務違反を発見した場合には、義務違反者に対して登記をするよう催告することになっているからです。具体的には、法務局から、義務違反者に対して登記を申請するよう催告する『催告書』が郵送されます。
催告を受けた義務違反者が、催告書に記載された期限内に登記を申請しない場合には、法務局の登記官が裁判所に義務違反を通知することになります。
ただし、催告を受けた相続人から説明を受けて、登記申請を行わないことにつき、登記官において「正当な理由」があると認めた場合には、裁判所への通知は行われません。
なお、登記申請なお、登記申請を行わないことについて「正当な理由」があると認められる場合について詳しくは、「第133回相続コラム 相続登記義務化 ? 登記申請しないことに「正当な理由」があると認められる場合について」をご覧ください。
相続登記申請義務違反者に過料が科せられるまでの流れ
1.催告書による催告
登記官は、相続登記を申請すべき義務に違反して過料に処せられるべき者があることを職務上知ったときは、申請義務に違反した者に対して相当の期間を定めてその申請をすべき旨を催告します。つまり、義務違反者に対して、法務局から『催告書』が郵送されます。
2.申請義務違反の通知
催告書に記載された期限内に登記を申請しないと裁判所に義務違反の通知がされます。ただし、登記申請しないことについて「正当な理由」があると認められた場合には、裁判所への通知はされません。なお、この正当の理由については、催告書の通知を受けた申請義務者が理由を説明する必要があります。
3.過料の決定
登記官から通知を受けた裁判所は、過料を科すか否かを判断し、過料を適用する場合には過料の金額を決定します。
おわりに
今回のコラムでは、相続登記の義務化の罰則、過料とは何か、また、どのような場合に過料が科せられるのか解説しましたが、いかがだったでしょうか。相続登記を申請すべき期間内に登記を申請しなかったとしても、すぐに過料が科せられるわけではないと解説しましたが、相続登記の申請には手間と時間がかかりますので、催告書が届くまで放置していても大丈夫というわけではありませんので、誤解しないよう注意をしてください。
相続人が多数いたり、遺産分割協議が難航している等、登記の申請に時間がかかりそうなケースでは、簡便な手段で罰則の適用を回避できる『相続人申告登記』という制度がありますので、そちらの利用をおすすめします。
相続人申告登記について詳しくは「第163回相続コラム 相続登記の申請義務を果たしたとみなされる相続人申告登記とその必要書類」をご覧ください。
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