相続の相談の際によく質問されることがあります。「相続放棄をすると、子どもに相続権が移ることはあるのだろうか」というものです。結論から言えば、相続放棄をしても代襲相続は発生しません。一方で、相続人が死亡した場合や、法律上相続人になれなくなる欠格や廃除の場合には、代襲相続が発生します。

今回のコラムでは、相続放棄と代襲相続のそれぞれの制度について簡単に解説するとともに、相続放棄と代襲相続の関係について解説したいと思います。

相続放棄とは何か

相続放棄とは、亡くなった方の財産を一切相続しないと宣言する手続きです。家庭裁判所に申し立てることで成立します。法律上重要なのは、相続放棄をした人は最初から相続人でなかった扱いになるという点です。つまり、財産だけでなく借金も含めて、何も受け取らないという選択をすることになります。

ただし、注意しなければならない点もあります。相続放棄は被相続人の死亡を知った日から原則として三か月以内に家庭裁判所へ申し出る必要があるのです。この期限を過ぎると、原則として放棄は認められません。手続きのタイミングが非常に重要なポイントです。

代襲相続とは

代襲相続とは、相続人が何らかの理由で相続できなくなった場合に、その子どもが代わりに相続する制度です。具体的には、相続人が死亡している場合や、相続欠格や家庭裁判所による廃除によって相続権を失った場合に、代襲相続が発生します。ここで大切なのは、代襲相続の原因がこの三つに限られるということです。相続放棄によって相続人資格を失った場合は、代襲相続は起きません。この点を明確に理解しておくことが重要です。

相続放棄と代襲相続の関係

では、なぜ相続放棄では代襲相続が発生しないのでしょうか。その理由は、相続放棄をした人は法律上、初めから相続人ではなかったとみなされるからです。

代襲相続は、元々相続人である人が何らかの理由で相続権を喪失した場合に、その子どもが代わりに相続する制度です。しかし相続放棄した場合には、相続放棄の効果によって、その放棄をした人は最初から相続人ではなかったことになります。

そのため、代わりに子どもに相続権が移るという発想自体が成立せず、結果として代襲相続は発生しないのです。この仕組みを理解すると、死亡や欠格・廃除の場合と放棄の場合の違いが明確に見えてくるのではないでしょうか。

相続放棄と代襲相続でよくある誤解

「相続放棄したら代襲相続によって子どもに相続権が移るのではないか」と心配する人もいますが、実際にはその心配は不要です。代襲相続が起きるのは、あくまで相続人が亡くなった場合や、欠格や廃除によって相続権を失った場合になります。

一方で、相続放棄には別の注意点があります。放棄することで、その人は相続人でなくなるため、他の相続人の遺産の取り分が変動したり、相続人の順位が後順位者に変更されることがあります。例えば兄弟姉妹が複数人いる場合には、放棄した人の分が他の相続人に分配され、結果として相続する遺産の割合が変わることがあります。また、第一順位の相続人である子が全員相続放棄した場合、結果として第二順位や第三順位の相続人に相続権が発生する場合があります。

おわりに

今回のコラムでは、相続放棄と代襲相続のそれぞれの制度について簡単に解説するとともに、相続放棄と代襲相続の関係について解説しましたが、いかがだったでしょうか。

相続人が亡くなったり、欠格・廃除になった場合には、代襲相続が発生し、その子どもが代わりに財産を受け取ります。これに対して相続放棄では、代襲相続は発生せず、放棄した人は最初から相続人でなかった扱いとなります。ただし、相続放棄をすると他の相続人の取り分が変わったり、相続人の順位が変更になることがありますので、相続放棄を考える場合には、その点にも注意が必要となります。

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