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相続コラム

第195回相続コラム 相続に「時効」はある?遺産分割と期限のある手続きをわかりやすく解説

相続の相談を受けていると、「もう何年も経っているから手遅れではないでしょうか」「相続にも時効がありますよね?」という声をよく耳にします。確かに、法律の世界では「時効」という言葉がさまざまな場面で使われますし、相続についても期限や時効が問題になる制度が存在します。ただ、相続に関するすべての手続きに時効があるわけではありません。

相続と聞いて多くの方がまず思い浮かべるのは、遺産をどう分けるかという「遺産分割」ではないでしょうか。そこでまずは、この点から整理してみましょう。

 

遺産分割そのものに時効はない

結論から言うと、遺産分割そのものには時効はありません。被相続人が亡くなってから何年が経過していても、相続人全員で話し合い、遺産分割協議を行うことは可能です。

「長年放置していたから、もう権利が消えているのでは」と不安に思われる方もいますが、単に時間が経ったという理由だけで、相続人としての地位や遺産分割を求める権利が失われることはありません。この点は、まず安心していただいてよいところです。

もっとも、「遺産分割に時効はない」と聞くと、「では、どれだけ放置しても問題ないのだろうか」と感じる方もいるかもしれません。しかし実際には、遺産分割と密接に関係しながら、時間の経過が大きな意味を持つ制度が存在します。

その代表例が、次に説明する「相続回復請求権」です。

 

遺産分割と関係が深い「相続回復請求権」とは

相続回復請求権とは、本来相続人である人が、相続人ではない第三者によって相続権を侵害されている場合に、その状態を是正するための権利です。

たとえば、実際には相続人でない人が、相続人であるかのように振る舞い、遺産を取得しているようなケースが典型です。このような場合、正当な相続人は、その人に対して権利を主張し、相続財産を取り戻す必要があります。その際に問題となるのが、相続回復請求権です。

遺産分割請求とは異なり、相続回復請求権には明確な時効が定められています。

 

相続回復請求権には時効がある

相続回復請求権は、いつまでも行使できるわけではありません。法律上、
・相続権が侵害されていることを知った時から5年
・相続開始から20年
のいずれか早い時点で時効により消滅するとされています。

これは、長期間にわたって法律関係が不安定な状態になるのを避けるための制度です。遺産分割自体に時効はないものの、相続人でない人が関与している場合には、時間の経過が決定的な意味を持つことがあるという点は、ぜひ知っておいていただきたいポイントです。

「遺産分割の話だと思っていたら、実は相続回復請求の問題だった」というケースも珍しくありません。そのため、放置している間に時効が完成してしまうリスクがあることには注意が必要です。

相続回復請求権について詳しい解説は「第136回相続コラム 相続権が侵害された場合に行使できる相続回復請求権とは何か」をご覧ください。

 

時効ではないが「期限」がある相続手続きも多い

相続の場面では、「時効」という言葉とは別に、「期限」が設けられている手続きも数多く存在します。これらは厳密には時効とは異なりますが、一定期間を過ぎると選択肢そのものが失われてしまう点で、実務上は非常に重要です。

代表的なものが、相続放棄や限定承認です。これらは、原則として自己のために相続があったことを知った時から3か月以内に行う必要があります。この期間を過ぎると、原則として単純承認したものとみなされ、後から借金が多いことが分かっても、相続放棄を選ぶことは難しくなります。

また、相続税の申告と納付には、相続開始から10か月という期限があります。これは税務上の期限であり、守らなければ加算税や延滞税が発生する可能性があります。遺留分侵害額請求についても、請求できる期間には制限があります。権利を侵害されたことを知ってから1年、相続開始から10年という期限が設けられており、これを過ぎると請求ができなくなります。

さらに、相続における「期限」の問題として、近年とくに注意が必要なのが相続登記の義務化です。これまで、不動産の相続登記は「やってもやらなくてもよい手続き」と受け止められがちでした。しかし、法改正により、相続によって不動産を取得した相続人は、一定期間内に相続登記の申請を行うことが法律上の義務となっています。

この相続登記の期限は、相続人であることや不動産の取得を知った日から原則として3年以内とされています。これは時効ではありませんが、期限内に登記をしない場合には過料の対象となる可能性があります。

遺産分割協議がまとまっていない場合でも、一定の手続きを踏むことで義務を果たす道が用意されており、「話し合いが終わっていないから登記できない」という理由だけで放置することは難しくなっています。

相続登記義務化は、相続手続きを早期に進めることを促す制度です。不動産を含む相続では、「遺産分割に時効はない」という点だけに目を向けるのではなく、登記という別の側面で時間制限があることも意識しておく必要があるでしょう。

 

「時効がないもの」と「時間制限があるもの」をどう考えるか

このように見ていくと、相続には
・遺産分割のように時効がないもの
・相続回復請求権のように時効があるもの
・相続放棄や相続税申告のように期限があるもの
が混在していることが分かります。

重要なのは、「すべてを急がなければならない」と考える必要はない一方で、「放置しても大丈夫」と一括りにしてしまうのも危険だということです。どの手続きが問題になっているのかによって、時間の意味合いは大きく変わります。

 

相続と時間の問題は、早めの整理が安心につながる

「もう何年も経っているから相談しても無駄かもしれない」と感じている方ほど、実は法的に整理できる余地が残っているケースも少なくありません。逆に、放置しているうちに選択肢が狭まってしまうこともあります。

相続における時効や期限の問題は、条文だけを見ても分かりにくく、ご自身のケースに当てはめて判断するのは簡単ではありません。だからこそ、早い段階で専門家に状況を整理してもらうことが、結果的に安心につながると言えるでしょう。

相続の手続きは、「時効があるのか」「もう遅いのではないか」と悩んでいる間に、かえって不安が大きくなってしまうことも少なくありません。ご家庭の状況によって、取るべき対応や急ぐべきポイントは異なります。当事務所では、相続に関する多くのご相談を通じて、一人ひとりの状況に応じた整理とアドバイスを行ってきました。まだ何から始めればよいか分からない段階でも構いません。初回相談は無料です。まずはお気持ちと疑問をお聞かせください。

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