故人が残した遺産には土地や建物、自宅といったように現金以外のものであることも考えられます。比較的簡単に分与しやすい現金や預金ですが、土地や建物の場合にはどうやって分ければいいのでしょうか?特に相続財産の中に多数の不動産が含まれていると、分け方が難しく、遺産分割協議でもめる確率が高くなる場合が多いといえます。
今回の相続コラムでは、相続に強い弁護士が、遺産分割協議でトラブルを起こさないためにも、どうしてもめ事が起きやすいのかを解説し、不動産の価値の評価方法やその判断方法についてご説明いたします。
なぜ不動産の遺産相続はもめることが多いのか?
昨今、インターネットの普及に伴い情報が多く出回るようになって、遺産分割でもめ事が起きている件数が年々増加している傾向にあります。遺産分割審判や遺産分割調停の事件数が、ここ十数年これまでの2倍以上にもなっており、遺産の金額の多さに関わらず、誰にでも起こりうる問題となってきています。身近な人同士であっても、むしろ身近な親族であるからこそ、お金が絡んでくるとなると、どうしてももめ事は起きがちです。
特に不動産という遺産は、分けにくく、そして、お金にすると、どのくらいの価値があるのか簡単には判断できないからこそ、トラブルの原因になっています。
不動産の相続で争いになるケース
遺産の不動産を誰が相続するのかで争う
遺産が現金や預金であれば簡単に金額がはっきりしていて、1円単位まで分割できるため、何分の1でも分割をすること自体は簡単です。
しかし、不動産はそういうわけにはいきません。現金のように分割できないため、基本的には1人の相続人が不動産を単独で取得することが望ましいものとなります。確かに、不動産を共有して相続するという方法もありますが、対立している相続人間での共有状態は新たな紛争が生じる可能性があり、弁護士目線では解決方法としては避けるべき方法と思います。
そして、1人しか持つことができない、または持つことが望ましいとなれば、「誰が持つべきなのか?」と協議がヒートアップしてしまうことでしょう。複数人が不動産の取得を望んだとなればそれは争いが生まれるのは確実ですし、特定の人が不動産の取得を望んだとしても、不動産の価値が分からない分、争いに発展する可能性が高くなっています。一般的にですが、不動産というのは基本的に特に高額になりやすい遺産です。
単なる土地としても、さらに建物を建てることができる、一等地であるなどであれば、さらに価値が高くなるため、現金よりも価値のある遺産と考える相続人もいるかもしれません。
代償金の支払いができないため争う
不動産を巡る遺産分割協議では、不動産を取得した人物ができなかった相続人に対して、特定の相続人だけ得をしないように、取得対価(これを代償金といいます)を支払う形で協議が成立することがあります。しかし不動産を取得した人物が他の相続人に払うべき代償金の原資がないとなると問題となります。
不動産取得することによって代償金を準備する必要がある場合、他の相続人に現金や預金などを多めに分配するなどして調整を必要性が出てきますので、遺産にどの程度現金や預貯金があるかも重要な要素となっていきます。
不動産の評価方法でもめてしまう
不動産というのは誰に相続するか、代償金がいくらになるか以外でも争いがおきるケースが見られます。
それは不動産の評価方法によるものです。不動産の価値というのは一定不変なものではなく、時代や世間情勢によって価値が変動してしまいます。そして,評価方法は一つだけではなく、複数あるため、いつの時点を基準するかだけではなく、基準日が同じでも評価方法によって金額が変わってきてしまいます。
そのため、評価方法をどのようにするのか、不動産の価値はいくらなのか、といった問題で,主に代償金を支払う側ともらう側でもめることが多くなります。不動産の評価方法は、「公示価格」、「実勢価格」、「路線価」、「固定資産評価額」など様々な種類があり、その評価方法によっては専門的な知識も必要となります。不動産の評価額で争いがある場合には、相続問題だけではなく不動産にも強い弁護士に依頼することが重要になります。
不動産の相続で争わないために弁護士にご相談を
不動産の相続で争わないためには、事前に相続対策をしっかりと行うのが重要です。可能であるならば誰が何を相続するのかで争わないように、遺言を準備するのも大事です。残されたご家族が争わないようにするために、当事務所では弁護士が相談にのります。
また、事前の準備が不十分であったために、上記のような争いに発展しそうな場合にも、早めに弁護士にご相談ください。法律の専門家として、争いを最小限にとどめ、かつご家族間で納得の行く公平な解決のサポートをさせていただきます。