前回のコラムでは、相続の際、不動産の分配でよくある争いについて解説しました。今回のコラムでは、その中でも不動産の評価方法の違いから生まれる相続問題にスポットを当てて弁護士目線で解説していきたいと思います。
相続人の遺産分割協議による取り決め
原則、遺産分割協議は、相続人全員の話し合いによるものですので、不動産の価値も全相続人が同意すれば、どのような評価方法を用いても問題なく、むしろ、相続人同士で評価方法を話しあって決めるものです。
もっとも、評価方法についての話し合いができない場合は、主に行われている評価方法を知ることが必要となってきます。実際に合意がなされてしまうと、後から「やっぱりあの評価方法で評価し直したい」と言っても覆すのは困難となってしまいますので、事前にどのような評価方法があるのかをしっかり押さえておくとことが大事になります。
相続した不動産の評価方法
不動産の評価方法は、いくつかありますが、ここでは一般的に多く使われている評価方法をご説明いたします。
固定資産評価額
実務上、まず最初に不動産、特に建物の評価の参考に利用されることが多いのが、この固定資産評価額による評価方法です。固定資産税を算定するために、行政庁が定める評価額で、毎年1月1日時点の不動産所有者宛に送られてくる固定資産税・都市計画税納税通知書や市役所等で取得できる固定資産評価証明書に記載されています。
路線価
路線の1平米あたりの評価額(路線価)を用いて算出する方法です。金額は道路別に決められていますが、路線価が定められている場所とない場所があり、路線価がついていない場合は、倍率方式で計算して価値をつけていくことになります。
時価
実際に不動産を売却した場合の金額のことを時価と言います。市場価格と照らし合わせ、厳密に算定する場合は、不動産鑑定が必要となります。金額としては、時価>路線価>固定資産評価額となることが多いです。
遺産分割協議と不動産の評価方法
固定資産評価額で決める場合
遺産分割を行う場合で、もっとも簡単に評価額を確認できるのは、固定資産評価額となります。固定資産税納税通知書などによって簡単に確認できるため、評価を決定する材料にしやすい利点があります。
相続税評価、路線価、公示価格など相続人間の合意で評価方法を定める場合
遺産分割の方法や内容などによって、どの評価方法を取るか相続人間で合意して決める方法です。この場合は、話の主導権を握る相続人が有利になってしまう場合があり、また、どの評価方法をどうやって算出するか問題になるため、話し合いの仕方に注意が必要となります。
不動産鑑定士に評価を出してもらう方法
もっとも客観的に、かつ、時価近い価格を出してもらえる不動産の鑑定の専門家に依頼する方法です。もっとも評価に関する揉め事に発展しなくなる方法と思われます。
しかし、不動産鑑定をしてもらうだけで数十万円かかってしまうため、鑑定を入れるタイミング、鑑定を入れる前に鑑定の結果に従うといった前提合意を取り決める必要があるなどの注意が必要となります。
不動産の遺産分割で争わないために
不動産を相続人の一人が相続し、その他の相続人には、金銭などを代わりに相続させるといった場合には、特に評価方法で争いになる危険性があります。不動産を相続する人としては不動産を安く評価し支払う金銭等を安くしたいという要望があり、また金銭を受ける側からすると高く評価してほしいと思うのが人情です。事前にどのような評価方法があるのかをしっかりと認識した上で、合意に至ることが大切です。
また、不動産の評価方法で争いが起きる前に、弁護士に相談して頂くと、わかりやすく評価方法をご説明し、またどのような評価方法でどう財産を分割するのが適切かなどアドバイスすることが可能です。残されたご家族間で争わないためにも、法律の専門家をご活用ください。当事務所では、不動産に精通した弁護士がご対応いたします。