相続対策の中で重要なウェイトを占めるのが、相続税をいかに節約するかという相続税対策。特に多くの資産を保有する方にとっては、残されるであろうご家族のことを想うと重要な関心事となるのではないでしょうか。今回のコラムでは、不動産の購入がなぜ相続税対策になるのかについて解説したいと思います。
相続税の評価額を抑える
不動産を購入すると相続税が節約できる主な理由は、不動産の相続税評価額が、現金等の他の財産と比較して低くなる傾向にあるからです。
相続税評価額とは、相続税を計算するときに基準となる財産の価格のことを言います。相続税の課税対象となる財産の評価は、基本的には遺産相続時の時価をもとに行われます。
しかし、土地や建物などの不動産の相続税評価額は、土地であれば路線価、建物であれば固定資産税評価額というもので判断されるため、時価(実勢価格)よりも低く評価されることがほとんどです。
不動産の種類によって、評価方法に違いはありますが、一般的に、路線価も固定資産評価額も、時価の2割~3割ほど低く評価されることが多く、その差額分にかかる税金を節約することができます。
例えば、現金1億円を持っていたとすると、現金1億円は、当然、価値はそのまま1億円ですが、現金1億円で時価1億円の不動産を購入し、その評価額が7000万円と判断されれば、相続税はその7000万円を基準に算定されることになるため、差額3000万円に課税される税金を節約することができます。
また、相続税は、相続税評価額が高くなればなるほどその税率も上がっていくので、課税される財産の額を減らすことにより、税率も下がるため、より大きな節税効果が見込めます。
もちろん、不動産の売買を行うには、その手間や手数料・諸費用などが必要になるため、そう単純には比較できませんが、時価と評価額の差が大きい財産で遺産を構成する方が、節税になるのは理解可能かと思います。
購入した不動産を人に賃貸することで相続税評価額を更に低くできる
現金を不動産に換えると、相続税評価額が低くなることで相続対策になりますが、それが賃貸不動産であれば、さらに効果的になります。自宅として利用することを目的とした不動産よりも、人に貸すことを目的とした賃貸不動産の方が、相続税評価額が2~3割程度低くなるためです。
不動産を賃貸にすると、その不動産を自身で活用したり処分することが制限されるため、その分資産としての価値が低いとみなされることになり、相続税評価額も下がることになるからです。
小規模宅地の特例や借入を行うなどの方法
小規模宅地等の特例とは、被相続人が住んでいた土地や事業用の土地について、一定の要件を満たす場合には、最大80%まで相続税評価額が減額される特例です。
例えば、被相続人の自宅の敷地の相続税評価額が1億円だったとします。この土地に小規模宅地等の特例が適用されると、2,000万円の評価で相続税を計算することが出来ることになるため、非常に大きな節税効果が期待されます。
被相続人が住んでいた土地や事業用の土地について、その全てに相続税が満額かかってしまうと、それを引き継ぐ相続人が住む土地や事業をする土地を失い、生活の基盤が失われてしまう危険性があるため、そのような酷な状況に追い込まないために小規模宅地等の特例という制度があります。
また、不動産の購入の際に、全てを自己資金でまかなうのではなく、借入を行い、借入分を負の財産として計上することで、資産総額を減らすという手段もあります。
これらの手段を活用する際には、適用条件や、借入を行うことのデメリット等を総合的に判断する必要があるため、専門家に相談の上、活用することをおすすめします。
当事務所でも、相続に強く、司法書士資格も保有し不動産にも強い弁護士が相続に関する無料相談を実施しております。税理士と連携し、不動産購入による相続税対策の相談も行っております。不動産の購入を含めた相続対策に興味のある方はお気軽にご相談ください。