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相続コラム

第90回相続コラム 遺言書保管制度を利用する際に押さえておきたい2つの通知制度

令和2年7月10日に施行された比較的新しい制度である遺言書保管制度。この遺言書保管制度を利用した場合には、「関係遺言書保管通知」と「死亡時通知」という2つの便利な通知制度も利用することができます。今回のコラムでは、これらの2つの便利な通知制度について解説したいと思います。

 

そもそも遺言書保管制度とは

自筆証書遺言書保管制度(以下「遺言書保管制度」)とは、その名が示すとおり、自筆証書遺言を法務局という行政機関が保管してくれる制度で、令和2年7月10日に施行された比較的新しい制度です。

自筆証書遺言は、遺言としてはシンプルで利用しやすい形式なのですが、反面、紛失してしまったり、内容が改ざんされたりする危険性があります。また、相続が発生した場面では、公正証書遺言とは異なり、検認という面倒な手続きが必要となるのも大きな負担でした。

上記のような自筆証書遺言のデメリットを補い、より遺言書の利用が普及するように創設されたのが遺言書保管制度です。

遺言書保管制度を利用すると、作成した遺言書の原本は法務局で保管されることになるため、紛失したり、誰かに偽造・変造されるという危険性もなくなります。また、遺言書保管制度の創設に伴い、法律が改正され、同制度を利用した場合の自筆証書遺言の検認は不要となりました。

遺言書保管制度について詳しくは
第81回相続コラム 自筆証書遺言を書くなら利用したい法務局の遺言書保管制度」をご覧下さい。

 

死亡時通知とは

遺言書をのこしたとしても、その存在自体が相続人に知られていないと、遺言の内容を実現することはできません。「遺言書が遺産分割協議後に発見され、かえって争いになった」という話しもなくはありません。そのため、遺言書を作成した場合には、遺言書を作成したことを相続人に伝えておくことが大切となりますが、「遺言書の存在を知られたくない」という方も少なくありません。

「遺言書の存在は、自身が亡くなるまで秘密にしておきたいが、実際に亡くなった際には、間違いなく相続人に遺言書の存在を認識してもらいたい」、そのような要望に応えるのが「死亡時通知」という制度です。

遺言書を法務局で保管する際に、「死亡時通知の申出」をすると、予め遺言作成者が指定した者に対して、遺言作成者の死亡時に、遺言書が保管されている旨の通知が法務局からなされることになります。

遺言書保管官は、市区町村の戸籍担当部署と連携しているため、遺言作成者が亡くなった事実を正確に把握することができますので通知漏れ等の心配もありません。

注意点としては、通知を受け取る者として指定できるのは1人という点です。通常は、相続人や遺言執行者を指定することになるかと思いますが、指定を受けた相続人等が高齢であったり、ご病気等をお持ちの場合には、受けた通知を処理することが難しいケースも想定されるため、通知を受けた際に、確実に対応が可能な者を指定することが重要となります。

 

関係遺言書保管通知とは

関係遺言書保管通知とは、遺言者の死亡後に、遺言者の相続人等が、①保管されている遺言書の閲覧をした場合や②遺言書情報証明書の交付を受けた場合に、法務局がその他の相続人に対して、法務局に遺言書が保管されている旨を通知するものです。

簡単に言うと、相続人の誰かが、保管されている遺言書を閲覧したり、証明書の交付を受けると、他の相続人にも遺言書の存在を知らせる制度と言えます。

前述の「死亡時通知」を受けた相続人が、法務局で、遺言書の閲覧や証明書の交付を受けた場合も「関係遺言書保管通知」が他の相続人に発せられ、結果、全ての相続人が遺言書の存在を知ることが可能となります。

この通知は、特に申出等を行わなくても、自動的に行われます。これにより、相続人全員が遺言書の存在やその内容を知る機会が平等に与えられることになります。裏を返せば、特定の相続人に対してだけ遺言書の存在を秘密にするということはできなくなりますので、その点は注意が必要です。

 

おわりに

今回のコラムでは、遺言書保管制度に関して、「死亡時通知」と「関係遺言書保管通知」について解説しましたが、いかがだったでしょうか。「死亡時通知」には申出が必要ですが、便利な制度ですので、遺言書保管制度を利用する際には、併せて利用することをオススメします。

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