4月より新年度となり、相続に関する改正法も施行され、遺産分割のルールが変更となりました。今回のコラムでは、遺産分割のルールがどのように変わったのかについて解説したいと思います。
遺産分割協議の期限は10年?
相続人全員で、誰がどの遺産をどのくらい相続するのか、遺産の分け方を決める協議のことを、遺産分割協議といいます。
この遺産分割協議については、法律上、「いつまでにしなければならない」という決まりは特にありませんし、法改正によって、遺産分割協議に期限が設けられたという事実はありません。
しかし、令和5年4月1日施行の改正法によって、寄与分や特別受益の主張については、期限が設けられ、相続開始後10年経過すると、原則として、その主張ができなくなるため、事実上、遺産分割協議に期限が設けられた格好となります。
つまり、相続開始後10年以上経過しても、遺産分割協議自体は可能ですが、その際には、寄与分や特別受益を考慮した具体的相続分での分割ができなくなり、法定相続分または指定相続分で分割することを余儀なくされることになります。
ちなみに、寄与分とは、簡単に言うと、遺産の増加や維持に貢献した相続人がいる場合に、その貢献を評価し、遺産の取り分を増やす制度です。寄与分について詳しくは「第33回相続コラム 相続で争いになりやすい寄与分について解説」をご覧下さい。
特別受益は、簡単に言うと、故人から特別な利益を得ている相続人がいる場合に、その得た特別な利益を考慮して、特別受益を受けている相続人の遺産の取り分を減らす制度です。特別受益について詳しくは「第43回相続コラム 遺産分割協議で考慮すべき特別受益とは」をご覧下さい。
両者とも、相続人間の実質的公平を図るための制度ですので、それらの主張が制限されると、不利益を被る相続人もでてくるため、そうならないためには、同主張が可能な間に、しっかり遺産分割協議をしなさいと促される格好となります。
民法第904条の3
前三条の規定は、相続開始の時から十年を経過した後にする遺産の分割については、適用しない。ただし、次の各号のいずれかに該当するときは、この限りでない。
一 相続開始の時から十年を経過する前に、相続人が家庭裁判所に遺産の分割の請求をしたとき。
二 相続開始の時から始まる十年の期間の満了前六箇月以内の間に、遺産の分割を請求することができないやむを得ない事由が相続人にあった場合において、その事由が消滅した時から六箇月を経過する前に、当該相続人が家庭裁判所に遺産の分割の請求をしたとき。
間接的に遺産分割協議の早期実現を促す
改正前の法律では、遺産分割協議をしなくても、特に相続人には不利益はなかったため、遺産分割をせずに、そのまま遺産を放置する相続人も多くいらっしゃいました。
遺産の中には、不動産が含まれていることも多く、不動産の名義が変更されないまま、代替わりが進み、いざ遺産分割をしようにも、相続人を探し出すのが困難になり、結果、所有者不明土地が増加したり、空き家が増加したりと、様々な問題の温床ともなっていました。また、相続開始後、長期間経過すると、いざ寄与分や特別受益の主張するにも、証拠が散逸していたり、証人が亡くなっているというケースも少なくありません。
今回の改正法では、寄与分・特別受益の主張に期間制限を設けることで、事実上、遺産分割協議にも期限が設定されることとなり、遺産分割の早期実現を図り、上記のような問題を解消しようとしているのです。
改正法施行前の相続にも適用
改正法施行は令和5年4月1日ですが、改正法施行前に発生した相続についても、改正法が適用されることになりますので注意が必要です。
改正法施行前に発生した相続については、経過措置が設けられており、相続発生から10年経過時または施行時から5年経過時(令和10年4月1日)のいずれか遅い時期が到来することによって、寄与分・特別受益の主張が制限されることになります。
おわりに
今回のコラムでは、改正法施行によって、遺産分割のルールがどのように変わったのかについて解説しましたが、いかがだったでしょうか。空き家問題や所有者不明土地問題に対応すべく、相続関連の法律が次々と改正(施行)されています。来年には相続登記も義務化されますし、遺産分割を行わずに放置されている遺産がある場合には、早めに遺産分割協議を行い、公平な遺産の分割をすることをおすすめします。
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