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相続コラム

第111回相続コラム 相続人に遺留分を渡さないことはできるのか?

残されたご家族のために遺言をのこしていたとしても、その遺言の内容によって遺留分を侵害し、結果、相続人間で遺留分を巡る争いが生じては、本末転倒となってしまいます。今回のコラムでは、相続人に遺留分をのこさないことはできるのかについて解説してみたいと思います。

 

そもそも遺留分とは

遺留分(いりゅうぶん)とは、簡単に言うと、一定の範囲の相続人に認められている、法律により最低限保証された遺産の取り分のことを言います。よく遺留分は相続分と混同されることがありますが、相続分は、遺産を相続することが前提で、その遺産をどのくらいの割合で相続するのかというお話です。それに対して、遺留分は、何らかの理由で相続ができなくなった場合に、法律が最低限の遺産を受け取ることができるようにした制度です。

例えば、夫・妻・子2人という家族構成で、夫が亡くなったが、夫が相続財産1億円を全て第三者に遺言によって遺贈していた場合、そのままでは相続人は一切遺産を相続することができなくなっていまいます。

そこで、相続人は、遺留分という最低限度の取り分を主張して、遺産をその範囲で取り戻すことになります。

具体的には、相続人は、配偶者と子になりますので、遺留分は相続財産の2分の1になります。つまり5000万円分の遺留分が認められます。この遺留分を法定相続分に従って、妻と子2人で分けると、妻の取り分は5000万円×1/2=2500万円、子はそれぞれ5000万円×1/2×1/2=1250万円となります。

上記の額を、遺贈を受けた第三者から、遺留分侵害額請求として、取り戻せるというわけです。

遺留分について詳しくは
第18回相続コラム 遺言によって遺産が1円も貰えない!?そんな時の救済手段、遺留分侵害額請求とは」をご覧下さい。

 

遺留分を侵害したことによる争い

遺留分を侵害する内容の遺言をのこしたとしても、その遺言自体は、法律上、有効となります。

ですので、法定相続人として、長男と次男がおり、長男に全財産を譲り渡す旨の遺言を作成したとしても、その遺言自体は有効となります。

しかし、次男がその遺言に納得のいかない場合には、遺留分侵害額請求という形で、長男から遺産を取り戻すことが可能ですので、長男の「遺言どおりに遺産を相続したい」という要望と次男の「遺産が一切もらえないのはおかしいから遺留分を取り戻す」という要望とのぶつかり合い、争いに発展する危険性があります。

 

遺留分を渡さないことはできるのか

そもそも遺留分を侵害するような遺言ではなく、他の相続人にも、遺留分相当額の遺産をのこすことができれば、特に問題はありません。しかし、遺産の大部分が、不動産のような、分割することが難しい財産で構成されているようなケースでは、必ずしも遺留分に配慮した遺産分配ができるわけではありません。

では、相続人に遺留分を渡さない方法はあるのでしょうか。

 

相続人の廃除

相続人を廃除すると、廃除された相続人の相続権を奪い、遺留分も主張することができなくなります。

ただし、相続人の廃除は、相続権の一切を奪うという非常に強い効力を有するため、家庭裁判所への申し立てが必要であったり、「被相続人に対して虐待をしている」、「被相続人に重大な侮辱を加えた」などの要件を満たす必要があります。

つまり、単に、「他の相続人に遺産を多く渡したい」、「疎遠だから」などの理由では、廃除は認められません。

相続人の廃除について詳しくは
第21回相続コラム 財産を渡したくない相手がいる場合に相続権を奪う相続人の廃除とはどんな制度か」をご覧ください。

 

遺留分の生前放棄

遺産を渡さない予定の人に、遺留分を生前放棄してもらうことができれば、遺留分を渡さないことが可能です。

しかし、遺留分の放棄は、あくまで遺留分権者、本人の意思によって行うものですので、遺産をのこす側や他の相続人が、相手の遺留分を一方的に放棄させることはできません。また、遺留分は、相続人に認められた重要な権利なため、本人の意思であっても、簡単に放棄することはできず、家庭裁判所に申し立て、その許可をもらう必要があります。

 

遺留分の主張を思い留まらせる

上で解説のとおり、そもそも相続人自体に著しい非行が見られ、廃除が可能なケース以外では、相続人から遺留分に関する権利を、一方的に奪うことは難しいと言えます。

ですので、遺留分については、主張する・しないは相続人の意思によるため、生前に、どうしてそのような遺産の分配なのか、よく家族間で話し合い、将来の遺留分の主張を思い留まってもらうことをおすすめします。

また、遺言をのこす際には、遺言の中に、付言事項というかたちで、遺産をどうしてこのような分配にしたのか、メッセージとともにのこし、遺留分の主張を思い留まってもらうという手段も有効です。

 

おわりに

今回のコラムでは、相続人に遺留分をのこさないことはできるのかについて解説しましたが、いかがだったでしょうか。遺留分という権利は、相続人にとって重要な権利なため、それを一方的に奪うことは難しく、家族間の話し合い等が重要となります。また、遺留分自体を失くすことは難しくても、相続の専門家に相談し、例えば、遺産を他の財産に変えたり、生命保険を利用するなどにより、遺留分自体の枠を減らすという対策も検討の余地があります。

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