最近では、いわゆる家族葬などの比較的小規模な葬儀も一般化しつつありますが、それでも葬儀には少なくない額の支出を伴います。葬儀費用は、規模によっては数百万円かかる場合もあり、相続税を計算する際に葬儀費用を控除すると、相続税を大きく節約することができます。今回のコラムでは、葬儀費用と相続税の関係を解説したいと思います。
葬儀費用は控除対象
相続税を計算する際には、様々な控除科目があり、葬儀費用もそのひとつとなります。相続財産から葬儀費用を控除することにより、その分相続財産が減り、結果、相続税を節約できるというわけです。
ただし、注意しなければならないのが、葬儀にかかった費用の全てを控除できるわけではないということです。
控除可能な葬儀費用
次のような費用が控除可能な葬式費用に該当します。
■葬式や葬送に際し、又はこれらの前において、火葬や埋葬、納骨をするためにかかった費用(仮葬式と本葬式を行ったときにはその両方にかかった費用が認められます。)
■遺体や遺骨の回送にかかった費用
■葬式の前後に生じた費用で通常葬式にかかせない費用(例えば、お通夜などにかかった費用がこれにあたります。)
■葬式に当たりお寺などに対して読経料などのお礼をした費用
■死体の捜索又は死体や遺骨の運搬にかかった費用
控除可能な葬儀費用とは認められないもの
■香典返しのためにかかった費用
■墓石や墓地の買入れのためにかかった費用や墓地を借りるためにかかった費用
■初七日や法事などのためにかかった費用
上記のような費用は、税法上、葬儀費用とは認められず、相続財産から支出したとしても、相続税を計算する際に控除することはできません。
参考:国税庁HP
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4129.htm
参考:国税庁 基本通達
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/sozoku2/02/03.htm#a-13_4
税法上の扱いと相続放棄は異なる
相続放棄も相続税も法律上の制度という点では同じですが、両制度は異なる目的のために制定された別の制度であるため、両者で取り扱いの異なるものが存在しますので、混同しないように注意が必要なケースがあります。
例えば、相続税法上、葬儀費用として扱われ、相続財産から控除可能な費用であったとしても、相続放棄との関係では、一般的に葬儀に必要な費用とは認められず、その支出を行ったことにより、後に相続放棄ができなくなるというケースも存在します。逆に、相続税法上は、相続財産から葬儀費用として控除はできなかったとしても、相続放棄との関係では、葬儀に通常必要な費用として、後の相続放棄が許容されるというケースもあります。
葬儀費用を被相続人の相続財産から支払う際には、それが相続税法上、控除対象となるのかどうか、また、仮に相続放棄を視野にいれている場合には、その支出によって相続放棄ができなくなるおそれはないか、という2点を念頭におく必要があります。
葬儀費用と相続放棄との関係について詳しい解説は、「第53回相続コラム 葬儀費用を相続財産から支出すると相続放棄はできなくなるのか?」をご覧ください。
おわりに
今回のコラムでは、葬儀費用と相続税の関係を解説しましたが、いかがだったでしょうか。葬儀費用と相続を考える際には、税法上の控除のみならず、関係する制度についても押さえておくと、安心できます。
相続に関する諸問題には、税法や民法などが複雑に絡み、幅広い専門知識が要求される場合があります。そのようなケースでは、相続問題に詳しい弁護士や税理士などの専門家に相談するのが、問題解決の近道となります。
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