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相続コラム

第44回相続コラム 遺言とは異なる内容の遺産分割協議はできるの

被相続人が亡くなった際に、遺言が見つかったけど、「その通りに分配すると相続人間で争いになりそう」、「税金の関係で遺言記載の内容とは異なる分け方をしたい」など、様々な理由で、遺言とは異なる内容で遺産分割協議をしたい、という要請があります。今回のコラムでは、遺言とは異なる内容の遺産分割協議ができるのか、できるとしたらどのような場合にできるのか解説したいと思います。

 

遺言と遺産分割協議の関係

遺言は、故人が自身の財産をどのように分配するのかを決定した最終意思なため、基本的には最大限尊重されるべきものです。

その意味では、遺産分割協議は、遺言がない場合にとられる補充的な手段と考えられます。つまり、遺言があれば、遺言が優先し、その内容に従い遺産を分配し、遺言がない、または、遺言に記載されていない遺産等については、相続人間で協議して決めるということになります。

しかし、実際に残された相続人全員が、遺言の内容とは異なった分配を希望し、合意が得られるならば、遺言に常に縛られるとするのも不合理です。

ですので、相続人全員の合意が得られるならば、遺言とは異なる内容の遺産分割協議をすることも基本的には可能です。

 

遺言とは異なる内容の遺産分割協議ができない場合

 

遺言で遺産分割協議が禁止されている場合

遺言を書く人(遺言者)からすれば、「後に相続人よって、その内容を覆されたら困る」という場合もあるかと思います。そのような場合には、遺言者は、遺言によって、遺産分割協議を禁止することができます。

遺言は本来、遺産分割協議よりも優先されるべきものと考えられるので、その遺言であえて遺産分割協議を禁止している以上、それに反する内容の遺産分割協議はできません。

参考:民法907条
共同相続人は、次条の規定により被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の全部又は一部の分割をすることができる。

 

遺言執行者の同意がない場合

遺言を書く際には、遺言執行者という、遺言書の内容を実現する手続きを行う者を指定することができます。

この遺言執行者は、遺言内容を実現する権利を有し、また実現する義務を負うため、遺言執行者が選任されている場合には、遺言執行者を無視した遺産分割協議をすることはできません。

つまり、遺言執行者が選任されている場合には、相続人全員の合意だけでは足りず、遺言執行者の同意がなければ、遺言とは異なる内容の遺産分割協議をすることはできません。

ただ、実務上、相続人全員の合意があるのに、遺言執行者があえて反対するというケースはほとんど耳にしません。

 

相続人以外の受遺者がいる場合

相続人以外の受遺者(遺言によって財産を譲り受ける人)がいる場合には、相続人全員が合意によって遺言とは異なる内容の遺産分割協議をしたとしても、それは無効となります。相続人の合意によって、無関係の受遺者の権利を一方的に奪うことはできないからです。

受遺者が相続人のひとりという場合には、その者を含めた遺産分割協議で、遺言とは異なる内容に合意するなら、問題はありません。また、受遺者は遺言によって譲り受ける権利を放棄することも可能なため、受遺者が、遺言とは異なる内容の遺産分割協議に同意するならば、これも問題はありません。

ただ、相続人以外の受遺者が、自身の権利を放棄してまで同意するというケースは少なく、その場合は、遺留分を主張し、その範囲で相続財産を取り戻すという流れになるケースが多くなるかと思います。

 

遺言とは異なる内容の遺産分割協議をする際の注意点

遺言に従い、遺産を分配し、その際に相続税も納付している場合には、その後に遺産分割協議で再分配すると、その分配が税法上、「相続人間の贈与」とみなされ、高額な贈与税が課せられることになるので注意が必要です。

同様の問題は遺産分割協議のやり直しでも発生します。
遺産分割協議のやり直しについて、詳しくは『第42回相続コラム 「騙された」、「やっぱり納得がいかない」。遺産分割協議はやり直しができるのか?』をご覧ください。

 

遺言とは異なる内容の遺産分割協議をする際には弁護士へ相談

遺言とは異なる内容の遺産分割協議を希望する際には、弁護士へ相談することをおすすめします。実際に、遺言がある以上、相続人間でその内容とは異なる内容で合意を取り付けるのは困難であったり、場合によっては、「遺言無効の訴え」、「遺留分侵害額請求」などに移行して対応が必要なケースもあります。

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