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相続コラム

第118回相続コラム 認知症対策に有効な任意後見制度とは何か

社会が高齢化するに伴って重要度が増している相続対策。同様に、認知症対策の重要度も年々増しています。2025年には65歳以上の5人に1人が認知症を発症するとも言われており、軽視することはできません。今回のコラムでは、認知症対策に有効な任意後見制度について解説したいと思います。

 

任意後見制度とは

任意後見制度とは、本人が十分な判断能力を有する時に、予め任意後見人となる方や将来その方に委任する事務の内容を公正証書による契約で定めておき、本人の判断能力が不十分になった後に、任意後見人が委任された事務を本人に代わって行う制度です。

簡単に言うと、まだ元気なうちに、認知症に備えて、あらかじめ自らが選んだ信頼できる人に、代わりにしてもらいたいことを契約で決めておく制度と言えます。

参考:厚生労働省の任意後見制度について解説ページ
https://guardianship.mhlw.go.jp/personal/type/optional_guardianship/

 

なぜ任意後見制度が認知症対策になるのか

認知症を発症すると、様々な法律行為を行うことが制限されてしまいます。

契約を有効に締結するには、物事を正常に判断する能力=事理弁識能力というものが要求されるため、認知症を発症し、事理弁識能力を欠くと判断されてしまうと、例えば、必要な介護サービスを締結しようにも、有効に契約することができなくなってしまいます。家の修繕が必要な場合でも、修繕業者と契約をすることもできません。

また、銀行などの金融機関に事理弁識能力がないと判断されてしまうと、口座が凍結され、預金を引き出したりすることもできなくなってしまいます。

上記のような場合に備えて、法律では、法定後見制度というものを定めており、その法定後見制度の下では、家庭裁判所に選任された法定後見人とよばれる人が、判断能力を失った者の代わりに、必要な契約の締結や財産管理等を行うことになります。

しかし、法定後見制度も万能ではなく、不都合が点も存在するのも事実です。

例えば、後見人の選任は、家庭裁判所で行うため、誰が後見人となるかは裁判所次第となってしまいます。また、後見人には弁護士等の専門家が選任されることも多く、一度選任されると、本人の判断能力が回復するか、本人が亡くなるまで後見が続くため、トータルで計算すると相当額の後見人報酬が必要となり、本人の財産がその分減少していくことになってしまいます。

それに対して、任意後見制度によって後見人を選ぶ場合は、ご自身が信頼できる人を自由に選ぶことができますので、「誰が後見人となるかは裁判所次第」ということがなくなります。

また、報酬についても、任意後見契約の際に自由に額を決めることができますので、ご家族との契約であれば、報酬をゼロにすることも可能ですし、仮に報酬をご家族に渡したとしても、実質的には遺産を前倒しで譲っているような格好になります。

ただし、任意後見の場合であっても、任意後見が開始する際には、任意後見人を監督する任意後見監督人が選任され、その監督者に対する報酬は発生しますので注意が必要です。

 

任意後見制度を利用するためには

任意後見制度を利用するには、任意後見契約を後見人となる者と結ぶ必要があります。そして、契約行為を行う以上、契約を結ぶ本人に契約の内容等を理解し判断する能力が必要となるため、既に認知症になっている方は、任意後見制度を利用することはできません。

つまり、任意後見制度を利用される場合には「元気なうちに」任意後見契約を結んでおく必要があるのです。

また、任意後見契約は、誰が後見人となるか決める重要な契約なため、公証人に公正証書を作成してもらうことが法律上義務付けられています。

任意後見契約を締結すると、公証人の嘱託により、法務局に登記がなされます。実際に後見契約の効力が発生した際には、法務局で登記事項証明書を取得することで、任意後見人は自らの代理権の存在を証明することができるようになります。

 

任意後見を開始するには

任意後見契約は、契約した段階では効力は発生せず、本人の判断能力が低下した後に、任意後見人となる者やご家族が、家庭裁判所に任意後見監督人選任の申し立てをすることによって、任意後見が開始します。

任意後見契約は、認知症などにより判断能力が低下した場合に備えて結ばれるものなため、契約段階では効力は発生しません。

任意後見人は、本人により選任された後見人ではありますが、後見が必要な時点では、本人による監督は見込めないため、後見人を監督する者が必要であり、その監督人は家庭裁判によって選任されます。そして、その監督人が選任されると、任意後見契約の効力が発生し、任意後見が開始することになるのです。

任意後見監督人選任の申し立ては、本人とそのご家族や任意後見人となる者が行うことができます。本人以外が申し立てを行う際には、原則として、本人の同意が必要となります。本人が意思表示できない場合には、同意は不要になります。

 

任意後見制度と民事信託

認知症対策には、任意後見制度以外にも、民事信託(親子信託)を利用するという手段もあります。

民事信託(親子信託)について詳しくは
第26回相続コラム 認知症になる前に利用したい親子信託(民事信託)のススメ ~導入編
第27回相続コラム 認知症になる前に利用したい親子信託(民事信託)のススメ~基礎編
第28回相続コラム 認知症になる前に利用したい親子信託(民事信託)のススメ~メリット編
をご覧ください。

 

おわりに

今回のコラムでは、認知症対策に有効な任意後見制度について解説しましたが、いかがだったでしょうか。任意後見制度は「もしもの場合の後見人をご自身が信頼できる人を自由に選ぶことができる」という点と、それは「認知症になる前にしか利用できない」という点が、重要なポイントとなります。

当事務所では、認知症対策として、任意後見制度や民事信託についてのご相談も広く行っております。初回相談は無料となっておりますので、認知症対策について詳しく知りたい方や、将来の財産管理に不安のある方は、お気軽にご相談ください。

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