2024年4月1日より、相続登記が義務化されました。正当な理由なく一定期間内に相続登記を申請しなければ、罰則の適用もあります。第153~155回のコラムにて、代表的な相続のパターンにおける相続登記を申請する際の必要書類について解説しました。今回のコラムでは、相続登記の申請書の書き方を解説したいと思います。
登記申請書とは
登記申請書とは、相続登記を含む登記を申請する際に、法務局に提出する書類です。
相続が発生すると、故人から相続人へと所有権が移転するため、その所有権の移転を公の記録簿である登記簿に反映させる手続きが相続登記であり、相続登記も登記の申請である以上、申請書の提出が必要となります。
不動産の名義人が亡くなったとしても、自動的に登記簿の内容が切り替わるわけではないので、不動産を取得した相続人等が、内容を変更するための登記を申請する必要があり、その際に提出する申請書が、登記申請書というわけです。
登記申請書の様式
登記申請書には、実は、専用の用紙等があるわけではないので、必要事項を記載しさえすれば、手書きで作成しても、パソコンで作成しても問題ありません。普段から登記申請書を書き慣れているという方は多くはないと思いますので、初めての方は、法務局のホームページで、記載例やフォーマットをダウンロードすることができますので、そちらを活用することをオススメします。
法務局ホームページ
https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/minji79.html
相続登記申請書の書き方-見本付き
相続登記申請書の書き方のサンプルは以下のようになります。
サンプルでは、不動産の名義人であった札幌太郎さんが亡くなり、その妻である札幌花子さん、長男の札幌一郎さん、次男の札幌次郎さんが、それぞれ法定相続分通りに不動産を相続したという事案を想定しております。
以下、各記載内容について詳しく解説していきます。
①登記の目的
まず、登記申請書には、『登記の目的』を記載します。『登記の目的』には、どのような権利関係の変動について登記を申請するのか、その目的を記載します。
相続登記の申請の場合には、相続による所有権の移転について申請するため、『登記の目的』は『所有権移転』となります。
なお、仮に被相続人が有していた権利が、不動産に対する100%の所有権ではなく、不動産に対する共有持分であった場合には、その持分が移転したことを申請することになるため、『登記の目的』は、『所有権移転』ではなく、『札幌太郎 持分全部移転』のように被相続人名とその持分の移転である旨を記載することになります。
②原因
次に、『登記の目的』が発生した『原因』を記載します。
相続登記の場合、『相続』の発生によって所有権が移転しているため、『原因』に記載するのは『相続』となります。『原因』を申請書に記載する際には、上に掲載したサンプルのように“いつ”発生した相続なのかも併せて記載し、『令和○年○月○日 相続』のように記載します。
なお、日付は、戸籍(除籍)謄本に記載されている戸籍上の死亡日を正確に記載します。また、同じ相続の場面であっても、遺言によって遺贈を受けた場合には、登記原因が『相続』ではなく『遺贈』となる場合がありますので注意が必要です。
③相続人
『相続人』の記載欄には、被相続人の氏名を記載するとともに、相続人の住所・氏名を記載します。今回の記載例のように、複数の相続人が相続する場合には、各人が相続することになった持分も記載します。
今回の記載例では、法定相続分通りに相続し、相続人は妻と子2人というケースを想定していますので、妻の相続分は1/2、子の相続分はそれぞれ1/4となります(相続分がよくわからないという方は、「第121回相続コラム 相続の基本 相続分について解説」で詳しく解説しているので、そちらをご覧ください。)。
登記の申請人となる相続人は、氏名の末尾に押印します。この押印は、認印でも問題ありません。
申請書の内容に誤りがあった場合等に、法務局から確認の連絡がくることがありますので、連絡先の電話番号も記載します。日中に連絡のとれる番号であれば、携帯電話でも差し支えありません。
なお、今回のサンプルでは、相続人の住所に『住民票コード』を付記していますが、『住民票コード』は必ず記載しなければならないものではありません。『住民票コード』を記載しておくと、添付情報として住所証明情報(住民票の写し)の提出を省略することができます。
④添付情報
第153~155回のコラムで解説したとおり、登記の申請には、様々な書類(情報)を添付して提出する必要があります。今回解説する相続登記の申請では、添付する書類(情報)として、『登記原因証明情報』と『住所証明情報』が必要となりますので、それらを申請書に記載します。
登記原因証明情報とは、登記の原因となる事実が間違いなく発生したということを証明するための情報(書類)になります。相続登記の申請では、『相続』が登記原因となるため、その相続が発生したことを証明するための情報を添付します(被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等)。また、現在の登記簿上の名義人が、亡くなった被相続人と同一人物であることを証明するための書類として被相続人の住民票の除票(または戸籍の除附票)が必要となります。
新たに登記名義人となる相続人についても、その『住所』を申請する必要があり、その住所を証明するための情報(住民票等)も併せて提出する必要があります。この情報のことを『住所証明情報』と呼びます。③で解説したように、申請書に『住民票コード』を記載している場合には、相続人についての『住所証明情報』の提出は省くことが可能です。
法定相続分通りに相続登記を申請する際の具体的な必要書類については、「第153回相続コラム 法定相続分通りに相続する場合の相続登記の必要書類」で解説しておりますので、そちらをご覧ください。
⑤登記識別情報の通知希望の有無
登記が完了すると、登記識別情報というものが法務局から通知されますが、通知が不要な場合には、□にチェックを入れます。
登記識別情報とは、昔で言うところの権利証(登記済権利証)にあたるものですので、不動産を売却したり、不動産を担保に供する際に使うとても大切な情報となります。特別の理由がない限り、通知を受けることをオススメします。
⑥申請日
相続登記の申請日と申請先の法務局名を記載します。相続登記を申請する法務局は、不動産の所在地を管轄する法務局となります。
札幌市の場合、区によって法務局の管轄が異なりますので、注意が必要です。例えば、不動産の所在地が中央区の場合には、『札幌法務局(本局)』になりますが、豊平区や南区の場合には、『札幌法務局 南出張所』になります。
法務局の管轄については、法務局ホームページで確認することができます。
法務局ホームページ
https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/static/kankatsu_index.html
⑦課税価格・登録免許税
登記を申請する際には、登録免許税という税金を国に納める必要がありますので、申請書に課税価格および登録免許税の額を記載します。
課税価格には「固定資産評価額」を記載しますが、「固定資産評価額」は、固定資産評価証明書等で確認することができます。
なお、固定資産評価証明書は市町村役場の窓口で取得することが可能です。不動産の所在地が札幌市内であれば各市税事務所や札幌市役所の窓口で取得することができます。
⑧不動産の表示
相続登記の申請の対象となっている不動産の情報を記載します。
土地を相続する場合には、不動産番号、所在、地番、地目、地積を、建物を相続する場合には、不動産番号、所在、家屋番号、種類、構造、床面積を記入します。内容を正確に記入するために、登記事項証明書を取得し、その証明書の記載通りに記入します。
なお、今回のサンプルでは、『不動産番号』も記載しておりますが、『不動産番号』は必ず記載しなければならないものではありません。『不動産番号』を記載しておくと、土地の所在、地番、地目、地積、建物の所在、家屋番号、種類、構造、床面積の記載を省略することができます。
おわりに
今回のコラムでは、相続登記の申請書の書き方を解説しましたが、いかがだったでしょうか。今回紹介したサンプルは、あくまで一般的な相続のケースを想定しておりますので、事案によっては内容が異なる場合がありますが、書き方の参考になるのではないかと思います。
事案によっては申請書の内容が複雑になったり、また、必要書類の収集等にも手間と時間がかかりますので、相続登記の申請で迷ったり、手続きに不安のある方は、相続の専門家に相談することをオススメします。
当事務所は、相続に精通した弁護士が、皆様の相続問題の解決に尽力いたします。また、当事務所では、弁護士×司法書士×行政書士のスリーライセンスを保有しているので、法律問題の解決から実際の相続登記の申請までワンストップサービスで提供可能です。初回無料にて相談を行っておりますので、相続・遺産分割・不動産相続など、相続に関することでお悩みのある方は、お気軽に当事務所までご相談ください。