社会の高齢化に伴い、相続対策の重要性が認知され、また、終活ブームとも相まって、近年、遺言をのこされる方が増加傾向にあります。今回のコラムでは、相続対策の要とも言える遺言について、遺書との違いから解説したいと思います。
そもそも遺言とは何か
「遺言」は、通常、世間では、「ゆいごん」と読まれますが、法律上は「いごん」と読まれるのが一般的です。
この遺言は、故人(被相続人)の最終意思を示すもので、ご自身が亡くなった後に、ご自身の財産のうち、誰に何をどう受け継がせるのか等を決めることができます。
例えば、「自身の所有している不動産は長男に、株式や社債などの有価証券は長女に相続させる」などを遺言に記載し、それぞれに相続させるイメージです。
また、利用されることは少ないですが、ご自身の遺産に関する事項以外にも、子の認知を遺言で行ったり、自身の死後に親権者がいなくなる未成年の子に対する後見人を指定したりすることもできます。
遺言と遺書の違い
「遺言」とよく似た言葉として「遺書」というものがあります。
遺書とは、ご自身の死後に残されるご家族や友人、知人などに、ご自身の気持ちを記した手紙のことをいいます。遺書は、想いを伝える一種の手紙にすぎないため、その方式は自由ですし、それによって何か特別な法的効力が発生するわけではありません。
これに対して遺言は、法律上に定められた方式に則り作成されるもので、財産の移転等の様々な法的な効力を持つことになります。
逆に言うと、遺言を作成する際には、法律で定められた方式を遵守する必要があり、その方式に従って作成される限り、それは遺言として法律上認められた様々な効力が発生することになりますが、その方式を無視して作成されると、法律上「遺言」とは認められず、法的な効力も発生しません。
例えば、法律上、遺言は、原則として、書面で作成することが要求されています。ですので、仮にスマートフォンなどで動画を撮影し、その動画上で、ご自身の財産を誰が受け継ぐのか等について伝えていたとしても、それは「遺言」とは認められません。単に『ビデオレターとして「遺書」が作られた』と法律上は解釈され、法的な効力は一切発生しません。
なお、上記のようなビデオレターは、法律上の効力が発生するわけではありませんが、相続人がその想いを汲み取り、そのビデオレターの内容に従って遺産分割を行うということは、当然、可能です。ただ、それは、相続人が自発的に故人の意思に従った結果にすぎず、「遺言の効力」によって財産の移転等が発生したわけではありません。
遺言とは何かまとめ
今回のコラムでは、そもそも遺言とは何か、遺書との比較から解説しました。
遺言とは何か、まとめると
■遺言は故人の最終意思を示すものです。
■遺言は法律に定められた方式で作成する必要があります。
■遺言は財産移転などの法律で認められた様々な効力を発生させます。
次回以降のコラムでは、具体的に、「遺言についての方式はどのように法律で定められているのか」、「遺言で発生する効力にはどのようなものがあるのか」等について、詳しく解説していきたいと思います。
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