第108回相続コラムでは、二重相続資格者の相続として、孫養子が代襲相続するケースについて解説しました。今回のコラムでは、被相続人の「配偶者」と「兄弟姉妹」の地位が重複する場合の相続について解説したいと思います。
そもそも二重相続資格者とは
二重相続資格者とは、読んで字のごとく、二重に相続資格が認められる者を指します。簡単に言うと、1人で2人分の相続資格がある人のことです。
よくある二重相続資格者のケースとして、第108回相続コラムで解説した、孫養子が代襲相続するケースで、親に代わって相続する代襲相続人という相続資格と、養子縁組によって得た養子という相続資格が併存する場合です。
孫養子が代襲相続する場合の詳しい解説は
「第108回相続コラム 二重相続資格者の相続 孫養子が代襲相続するケースについて解説」をご覧ください。
配偶者と兄弟姉妹の地位が併存
仮に、上の図のような家族構成のケースで、Bさんが亡くなると、Bさんの両親は既に他界しており、また、子もいないため、その相続人は、配偶者および兄弟姉妹ということなります。
そして、上の図のAさんは、Bさんと婚姻しているため、Bさんの「配偶者」であり、また、Aさんは、Bさんの親と養子縁組を行っているため、Bさんとは「兄弟姉妹」の関係にもあります。つまり、Aさんは、Bさんの相続に対して、二重に相続資格を有することになります。
「兄弟姉妹同士は結婚できないのでは?」と思われる方もいらっしゃるかと思いますが、「養子と実子」との間に血の繋がりがなければ、法律上、婚姻することが可能です。典型的なケースとして、妻の実家に婿入りする際に、妻の両親と養子縁組を行う場合などが挙げられます。また、「遺産をのこすために、献身的に介護してくれた長男の嫁を養子にした」というケースでも、「配偶者」と「兄弟姉妹」という地位が併存することになります。
二重資格者の相続分
上の図のようなケースで問題となるのは、Aさんの相続分はどうなるのかということです。すなわち、Aさんには、Bさんの「配偶者」という相続資格と「兄弟姉妹」という相続資格とが、二重に認められるため、どちらの相続資格に基く相続分を取得するのか、または、両方の資格に基いて相続分を合算して取得することができるのかが問題となります。
この点、二重に相続資格があるのなら、その資格のとおりに、両資格に基く相続分を取得すべきという考え方も有力ですが、実務上は、先例(昭23.8.9民甲2371民事局長回答)に倣い、Aさんは、配偶者としての資格に基く相続分のみを取得するという扱いになっています。
その理由として、配偶者は、相続の順位の影響がなく、常に相続人になれるという意味で、他の相続人よりも非常に強い立場にあり、また、配偶者が兄弟姉妹と遺産を分ける際には3/4という大部分の遺産を取得できるため、別途相続分を認める理由に乏しいということが、考えられます。
おわりに
今回のコラムでは、被相続人の「配偶者」と「兄弟姉妹」の地位が重複する場合の相続について解説しましたが、いかがだったでしょうか。同じ二重相続資格者の扱いでも、孫養子が代襲相続した場合と大きく異なる扱いとなっています。
家族構成が複雑になると、相続に関する法律関係も複雑になってくる場合がありますので、扱いに迷ったら、相続に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。
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